心機能分析のための分子プローブの開発

静脈内投与型O-15標識O2剤(Injectable [15O]O2)によるブタ心筋酸素摂取率の測定

ラット脳酸素代謝測定を目的として開発した静脈内投与型O-15標識O2剤(Injectable [15O]O2)について、周囲高放射能の影響をキャンセルアウトして対象組織の酸素代謝を評価できる特徴に着目し、[15O]O2ガス吸入法では周囲(肺)に存在する高い放射能が解析上の困難さを増す心筋における酸素代謝測定への応用を検討した。

動物にはミニブタを用い、Injectable [15O]O2を急速靜注するinjection法と、大腿動静脈間を人工肺を介して接続し人工肺より持続的に[15O]O2ガスを供給するcontinuous infusion法を施行して、[15O]O2ガス吸入法(continuous inhalation法)と比較検討した。その結果、injection法、continuous infusion法ではcontinuous inhalation法と比較して肺における放射能を大きく減弱することに成功し、心筋側壁において同等の酸素摂取率(OEF)を測定できることを示した。

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主要論文

  • Quantification of regional myocardial oxygen metabolism in normal pigs using positron emission tomography with injectable 15O-O2.
    Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2010 Feb;37(2):377-85.

心臓交感神経イメージングのためのノルエピネフリントランスポータイメージング剤の開発

心臓交感神経の神経終末プレシナプスにはノルエピネフリントランスポーター (NET) が存在し、種々の心疾患において、このNETの発現量に変化が起こっていることが報告されている。したがって、NETの変化を体外から検出することは、これらの病態に関する有用な情報を与えうると考えられる。我々はこれまでに脳内NETイメージング剤として(S,S)-[123I]IPBMの有効性を明らかとしていることから、本化合物の心臓NETイメージング剤としての応用性を評価した。

インビトロの検討において、 (S,S)-IPBMはNETに結合するリガンドとして汎用されているnisoxetineや母体化合物のreboxetineとほぼ同等の親和性を持つことを認めた(図2)。ラットを用いたインビボの検討において、 (S,S)-[125I]IPBMは速やかかつ高い心臓への取り込みを示し、放射能の心臓血液比は経時的に増大した(図3)。さらに各モノアミントランスポーター結合剤を投与したときの(S,S)-[125I]IPBMの心集積を評価したところ、NET結合剤であるnisoxetineやdesipramineによってのみ集積が阻害されたことから、(S,S)-[125I]IPBMがインビボでもNETに選択的に結合していることが示された(図4)。
以上の結果から、(S,S)-[123I]IPBMがNETを標的とした心機能診断イメージング剤として有用な性質を有することが示された。

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主要論文

  • Evaluation of radioiodinated (2S,alphaS)-2-(alpha-(2-iodophenoxy)benzyl)morpholine as a radioligand for imaging of norepinephrine transporter in the heart.
    Nucl Med Biol. 2008 Feb;35(2):213-8.

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