炎症反応の分析のための分子プローブの開発

シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)イメージング用分子プローブの開発

シクロオキシゲナーゼ(COX)はプロスタグランジン合成の律速酵素として働いている。このCOXの誘導型アイソフォームであるCOX-2は炎症、腫瘍をはじめとする様々な疾患の病態と密接に関連しており、これらの疾患の診断・治療のターゲットとして注目されている。

本研究では、COX-2イメージング剤の開発を目的とし、2種のCelecoxib誘導体(IMTP;スルホン酸メチルタイプ、IATP;スルホン酸ア ミドタイプ)のCOX阻害活性・体内動態を比較した。その結果、IMTP、IATPは高いCOX阻害活性とアイソフォーム選択性を有していた。また、ラッ トの体内分布実験において、[125I]IMTPは[125I]IATPよりも速やかな血中クリアランスを示した。[125I]IATPの血中移行率(88.0%)は[125I]IMTP(18.1%)よりはるかに高く、炭酸脱水酵素(CA)阻害剤によって低下した。これらの結果から、スルホン酸メチルタイプである[125I]IMTPがCOX-2選択的イメージング剤として、より優れた性質を持つことを見いだした。

しかしながら、Celecoxibなどの三環系COX-2選択的阻害剤を母体化合物とする放射性標識化合物については、炎症モデル動物を用いた検討で、 病変部への集積が認められていない。一方、三環構造以外のCOX-2選択的イメージング剤は報告がないことから、病変部へ集積しない原因の一つには、化合 物に共通した三環構造が関与している可能性があると考え、次に、Celecoxib類とは異なる構造を有する新規COX-2イメージング薬剤の創製を試みることとした。すなわち、三環構造をとらず、COX-2への阻害活性、選択性の高い阻害剤であるLumiracoxibを母体化合物に、放射性同位元素を 導入した化合物[125I]FIMAを設計・合成し、インビトロ、インビボでの評価を行った。その結果、FIMAはCOX-2への高い阻害活性・選択性を示し、[125I]FIMAはCOX-2誘導マクロファージに高く集積するとともに、インビボにおける高い安定性、速やかな血中クリアランスを示した。これらの結果から[125I]FIMAはCOX-2イメージング剤として優れた性質を有することを明らかとした。

FIMA_for_HP

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COX-2

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主要論文

  • Synthesis and evaluation of a radioiodinated lumiracoxib derivative for the imaging of cyclooxygenase-2 expression
    Nucl Med Biol 2009;36(8):869-76
  • Synthesis and evaluationo of radioiodinated cyclooxygenase-2 inhibitors as potential SPECT tracers for cyclooxygenase-2 expression.
    Nucl Med Biol 2006;33(1):21-7.

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