メッセージ ~その(4)~

博士修了者からのメッセージ

趙 萌 博士

YouTubeでは「英語字幕版」も公開しています。

研究テーマ:「オキサリプラチンによる急性末梢神経障害におけるTRPA1チャネルの関与」

がん化学療法で用いられるタキサン系、白金製剤などの抗がん剤は、副作用として、手足のしびれ、歩行困難などの末梢神経障害を高率に誘発しますが、現在のところ、有効な予防法や対処法は確立されておらず、がん化学療法の用量規定因子ともなっています。
特に、転移性大腸癌治療の中心的薬剤として用いられているオキサリプラチンは、ほぼ全例において投与直後から数時間以内に寒冷刺激で誘発、増強される感覚異常など、他の抗がん剤では見られない特有の急性末梢神経障害を誘発することが知られていますが、その発症機序は明らかになっていません。
そこで、オキサリプラチンによる急性末梢神経障害の動物モデルを作製し、特に侵害受容に深く関わるtransient receptor potential(TRP)チャネルの関与とその分子機構について検討してきました。
その結果、オキサリプラチン投与による急性冷過敏応答の動物モデルを確立し、この冷過敏応答は代表的な鎮痛薬に対して特徴的な薬物感受性を示すことを明らかにしました。また、この冷過敏応答は、一次感覚神経のTRPA1チャネルの感受性が選択的に増大し、ROS産生を介して活性化されることにより惹起するものであることを明らかにしました。これらの成果は、臨床上問題となっているオキサリプラチンによる末梢神経障害の発症機序の一部を明らかにしたものであり、その予防法と対処法確立のための重要な知見となります。

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発表論文

Zhao M, Nakamura S, Miyake T, So K, Shirakawa H, Tokuyama S, Narita M, Nakagawa T, Kaneko S:
“Pharmacological characterization of standard analgesics on oxaliplatin-induced acute cold hypersensitivity in mice.”
J Pharmacol Sci, 124: 514-517 (2014)

 

Zhao M, Isami K, Nakamura S, Shirakawa H, Nakagawa T, Kaneko S:
“Acute cold hypersensitivity characteristically induced by oxaliplatin is caused by the enhanced responsiveness of TRPA1 in mice.”
Mol. Pain, 8, 55 (2012)