メッセージ ~その(5)~

博士在学者からのメッセージ

西谷 直也

YouTubeでは「英語字幕版」も公開しています。

研究テーマ:「抗うつ作用を有するセロトニン神経回路の解明」

主に用いられているうつ病の治療薬は、脳内におけるセロトニン(5-HT)を増加させることにより効果を示すと考えられています。しかし、これらの薬は治療の効果が出るまでに数週間かかることが問題となっています。

セロトニンは脳内で情報伝達を行う神経伝達物質の一つであり、主に背側縫線核という脳部位に存在するセロトニン神経から神経発火に伴って放出されます。脳内ではセロトニンだけでなく、グルタミン酸やアセチルコリン、ドパミン等といった様々な神経伝達物質が受容体を介して相互に作用することで複雑なネットワークを形成しています。

近年、麻酔薬の一つであるケタミンが数時間という早期での抗うつ作用を示すことが報告されていますが、その詳細な機構は不明でした。我々は、脳内のセロトニン濃度を測定しながら薬物を投与することで、ケタミンが背側縫線核に存在するグルタミン酸受容体(AMPARs)およびアセチルコリン受容体(α4β2nAChRs)を介して脳内のセロトニン濃度を上昇させることを明らかにしました。

現在は、外部から光を当てることによって神経の活動を操作できるチャネルロドプシン(ChR2)を用いて、セロトニン神経を直接操作した際のマウスの行動について研究を続けています。

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発表論文

“Raphe AMPA receptors and nicotinic acetylcholine receptors mediate ketamine-induced serotonin release in the rat prefrontal cortex.”

Nishitani N, Nagayasu K, Asaoka N, Yamashiro M, Shirakawa H, Nakagawa T, Kaneko S.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24852262