Research

Gold(I)-Catalyzed Cascade Cyclization of Anilines with Diynes: Controllable Formation of Eight-Membered Ring-Fused Indoles and Propellane-Type Indolines

縮環型インドール誘導体は様々な天然物や医薬品に含まれる構造であります。我々は5-endo-dig型ヒドロアミノ化反応によるインドール形成に続く8-endo-dig型環化異性化反応による八員環縮環インドールの一挙構築法の開発を試みました。検討段階において、プロペラン型インドリンが同一の基質から得られることを見出し、用いる溶媒またはリガンドによって八員環縮環インドールとプロペラン型インドリンをそれぞれ選択的に得る手法を開発しました。
J. Org. Chem. 85(4) 2543–2559. (2020)

Synthesis of triazolo- and oxadiazolo-piperazines by gold(I)-catalyzed domino cyclization: application to the design of a MAP kinase inhibitor.

縮環ピペラジン骨格は、糖尿病治療薬をはじめとするさまざまな医薬品に含まれている化学構造です。我々は、トリアゾール環もしくはオキサジアゾール環と縮環したピペラジン骨格の効率的な化学合成法を確立しました。また、この合成法により得られた化合物が細胞の分化等において機能するp38 MAPキナーゼに対する阻害活性を示すことを見出すとともに、この阻害剤のキナーゼとの相互作用様式を明らかにしました。
Org. Lett. 21(2) 373–377. (2019)

Direct Synthesis of Aryl-Annulated [c]Carbazoles by Gold(I)-Catalysed Cascade Reaction of Azide-Diynes and Arenes

縮環カルバゾールは、有機材料や生物活性化合物に広く存在する基本骨格です。様々な縮環カルバゾールを簡便に合成できる手法の開発は、有機合成における極めて重要な研究課題です。我々は、容易に入手可能なアジドジインに金触媒存在下ベンゼン誘導体を作用させると、ベンゾカルバゾールが一挙に得られることを見出しました。ベンゼン誘導体の代わりにピロールやインドールを用いると、対応する縮環カルバゾールが良好な収率で得られることも同時に明らかにしました。本反応は2つのC-H結合を切断して3つの結合と2つの環を形成する連続環化反応です。
Chem. Sci.9(44) 8416-8425. (2018)

Gold(I)-Catalyzed Oxidative Cascade Cyclization of 1,4-Diyn-3-ones for the Construction of Tropone-Fused Furan Scaffolds

金触媒を用いたアルキンの酸化的環化反応は、環状ケトンやフランを合成する上で有用であることが知られています。我々は複数のアルキンを有する基質を用いれば、連続的な環化反応が可能になると考え、研究に着手しました。検討の結果、ビニル基を有する1,4-ジイン-3-オンに対して金触媒存在下ピリジンオキシドを作用させると、金カルベノイドの形成を契機とする連続環化反応が進行し、トロポン縮環型フランが一挙に生成することを見出しました。本生成物は、エポキシ化と環化の二段階の変換により高度縮環型ベンゾフランに変換することも可能でした。
Org. Lett. 20(15) 4401-4405. (2018)

Head-to-tail macrocyclization of cysteine-free peptides using an o-aminoanilide linker.

環状ペプチドはペプチド分解酵素による分解を受けにくく、その生体内安定性の高さから新薬創製において優れた利用価値がある化合物骨格です。しかしながら、環状ペプチドの合成において、直鎖状ペプチドからの環化の工程におけるエピメリ化が問題となります。我々は、直鎖状ペプチドのC末端に酸性条件下でカルボン酸を活性化できるリンカーを利用して、エピメリ化がほとんど進行することなく環状ペプチドを得る反応条件を確立しました。本反応はマイクロフロー法による環状ペプチド合成の大量合成にも応用可能です。
Bioorg. Med. Chem. Lett. 28(8) 1283-1286. (2018)

Gold-Catalyzed Cascade Reaction of Skipped Diynes for the Construction of a Cyclohepta[b]pyrrole Scaffold.

当研究室では、金触媒を用いた共役ジインとピロールの分子間[4 + 2]型反応によるインドール合成を報告しています。今回我々はこのインドール合成をスキップジインと呼ばれる1,4-ジインを基質とした反応に応用することを計画しました。検討の結果、スキップジイン1が金触媒によって活性化されることにより、位置選択的な分子間付加反応と7-endo-dig型ヒドロアリール化反応が連続的に進行し、7員環を有するシクロヘプタ[b]ピロール3が効率よく得られることを見出しました。
Org. Lett. 19(14) 3875-3878. (2017)

Direct Construction of Fused Indoles by Gold-Catalyzed Cascade Cyclization of Conjugated Diynes

金触媒を用いたアルキンの反応は近年盛んに研究が行われておりますが、共役ジインを基質とした反応はこれまでほとんど検討されてきませんでした。我々は、共役ジインの金触媒反応が複雑な骨格を構築するための有用な合成ツールになると考えて研究を行っております。今回我々は、共役ジインの分子内連続環化反応による縮環インドール骨格の一挙合成法の開発に成功しました。本反応は二段階目の環化反応において、通常進行しにくい7-endo-dig型環化が進行しやすいことに特徴があります。共同研究者の内山先生と斉藤先生(東京大学薬学研究科)がDFT計算を行った結果、7-endo選択性は中間体の形成における速度論的および熱力学的安定性により合理的に説明できることを明らかにしました。現在のところ、インドールに縮環した六員環の環ひずみにより6-endo-dig型環化が抑えられているものと考えています。
Org. Lett. 17(7) 1774−1777. (2015)

Gold-catalyzed cascade cyclization of 2-alkynyl-N-propargylanilines via the rearrangement of a propargyl group.

オルト位にアルキニル基を有するN,N-二置換アニリンの環化反応は、インドールの形成によりアニリン窒素上の置換基がインドールの3位に転位することが知られています。今回我々は、転位する置換基としてプロパルギル基を採用すれば高い反応性を有するアレンが生成し、さらに環化反応が進行することを期待して、分子内に求核部位を有するN-プロパルギルアニリン1をデザインしました。種々条件を検討した結果、1に対し金触媒を作用させるとアレン2を経由した連続的な環化反応が進行し、縮環インドリン3が高収率で得られることを見出しました。本反応は、三環が同時構築されることで、一次元的な部分構造(アルキン)から一挙に三次構造を構築できる点で興味深いと考えております。
Angew. Chem. Int. Ed. 54(27) 7862−7866. (2015)

Dual gold catalysis: a novel synthesis of bicyclic and tricyclic pyrroles from N-propargyl ynamides.

末端アルキンを含むジインに対し金触媒を作用させると、連続的に環化反応が進行し、複雑な骨格を一挙に構築できることが明らかになっています。今回我々は、本研究分野をリードするHashmi教授(ドイツ・ハイデルベルク大学)と連携して共同研究に着手し、N-プロパルギルイナミドに対して金触媒を作用させることで縮環ピロールを得ることに成功しました。本反応は、イナミドのβ位炭素上において求核反応が進行している点、中間体として金ビニリデンを経由することで通常不活性なsp3炭素上のC-H結合も反応に用いられる点で魅力的であります。本研究は、JSPS頭脳循環プログラムを利用した第一著者の半年間のドイツ留学と帰国後の検討により完成させることができました。
Org. Lett. 17(3) 604-607. (2015)

Formal [4+2] reaction between 1,3-diynes and pyrroles: gold(I)-catalyzed indole synthesis by double hydroarylation.

インドールは様々な医薬品や生物活性化合物に広く存在する基本骨格です。今回我々は、インドール合成における新たなアプローチとして、金触媒を用いた共役ジインとピロールの分子間 [4 + 2] 型反応を計画しました。検討の結果、共役ジイン1 が金触媒に活性化されることにより、ピロール2位からの分子間付加反応、6-endo-dig型ヒドロアリール化反応が連続的に進行し、4,7-二置換インドール3が効率良く得られることを見出しました。さらに、本反応における求核剤として種々のN-置換インドールを用いたところ、目的の連続反応が期待通りに進行し、カルバゾール骨格を構築することにも成功しました。
Chem. Eur. J. 21(4) 1463-1467. (2015)

Gold-catalyzed cascade cyclization of (azido)ynamides: an efficient strategy for the construction ofIndoloquinolines.

アルキンはカチオン性の金触媒により活性化され、種々の求核剤と反応することが知られています。今回我々は、分子内にアジドを有するイナミド1を用いれば、アジドがイナミドに求核的に作用して五員環2を形成後、窒素分子の脱離により生じる金カルベノイド3が近傍に位置するアルケンと反応することで、一挙にジヒドロインドロキノリン骨格を構築できるのではないかと考えました。検討の結果、R基としてCH2TMS基を有するイナミドの場合には末端アルケン4が得られた一方で、Ph基やn-Bu基を有するイナミドの場合にはシクロプロパン5が得られました。
Org. Lett.16(11) 3138-3141. (2014)

Synthesis of fused tetracyclic spiroindoles via palladium-catalysed cascade cyclisation.

プロパルギル化合物は、パラジウム触媒存在下においてアリルジカチオン等価体として機能し、連続結合形成反応に有用であることが知られております。今回我々は、パラジウム触媒存在下、種々の外部求核剤を用いることで、分子内にインドール構造を有するプロパルギルクロリドの連続環化反応による縮環型スピロインドールの合成を計画しました。 検討の結果、パラジウム触媒存在下、外部求核剤としてスルホンアミドを用いることで、分子内環化に続く外部求核剤による環化反応が期待通りに進行し、対応する縮環型スピロインドールを与えることを見出しました。一方、炭素求核剤を用いると、環化様式の異なる異性体が選択的得られることを明らかにしました。
Chem. Commun. 50(3) 298-300. (2014)

Gold(I)-Catalyzed Regioselective Inter-/Intramolecular Addition Cascade of Di- and Triynes for Direct Construction of Substituted Naphthalenes.

触媒的多連続反応は複雑な骨格を一挙に構築することが可能であることから、合成の短工程化や廃棄物の低減に有用な反応です。我々は金触媒を用いた外部求核剤による位置選択的な分子間/分子内付加反応によりナフタレン誘導体を一挙に構築することに成功しました。また、アルキンユニットが伸張したトリイン基質を用いることで、一挙にクリセン誘導体が得られることも併せて示しました。本反応は、外部求核剤を用いてジインの末端アルキン側に置換基を選択的に導入することに成功したはじめての例であり、置換ナフタレンおよびクリセンの多様性指向型合成法として有用な反応であると考えています。
J. Org. Chem. 77(11) 4907-4916. (2012)

Design and synthesis of novel class of CK2 inhibitors: application of copper- and gold-catalysed cascade reactions for fused nitrogen heterocycles.

プロテインキナーゼCK2は各種の癌や腎炎において過剰発現していることが知られており、CK2阻害剤はこれらの疾患の新規治療標的として期待されています。我々はこれまでの研究から得られたCK2の結晶構造、並びにCK2阻害剤の構造活性相関情報に基づき、新規骨格を有するCK2阻害剤を設計しました。当研究室で開発した縮環型複素環構築反応を利用して合成した誘導体のうち、ベンゾインダゾール誘導体が高いCK2阻害活性を示すことを見出しました。
Org. Biomol. Chem. 10(25) 4907-4915. (2012)

Gold-catalyzed three-component annulation: efficient synthesis of highly Functionalized dihydropyrazoles from alkynes, hydrazines, and aldehydes or ketones.

3分子以上の化合物が一挙に結合する多成分反応は、多様な生成物を容易に得ることができるため、生物活性化合物の探索や構造最適化研究において有用性の高い反応です。我々は多成分反応を用いて、数多くの医薬品や生物活性化合物に含まれるピラゾール骨格を効率的に構築することに成功しました。末端アルキン、アルデヒドまたはケトン、及びヒドラジン誘導体に対して金触媒を作用させることにより、三成分環形成反応が進行することを見出しました。本反応により、これまで効率的な合成法が少なかった多置換ジヒドロピラゾール誘導体を容易に合成することが可能です。また、本反応のアルキン成分として1,2-ジエチニルベンゼン誘導体を用いることにより、連続環化反応が進行し縮環型ジヒドロインダゾール骨格を一挙に構築することにも成功しました。
Org. Lett. 14(1) 326-329. (2012)

Direct synthesis of highly fused perimidines by copper(I)-catalyzed hydroamination of 2-ethynylbenzaldehydes.

高度に縮環した多環式化合物はその高い電荷移動度から、色素レーザーや電界発光の材料等に用いられ、近年注目を集めています。我々は、以前報告した四成分カップリング反応によ る縮環型イソキノリン合成法を応用し、高度縮環型ペリミジン誘導体の新規合成法の開発を計画しました。検討の結果、銅触媒存在下、2-ethynylbenzaldehydeと1,8-diaminonaphthaleneの環 化付加反応を行った後、パラジウム触媒によるC-Hアリール化反応を行うと、高度に縮環したペリミジン誘導体が容易に得られることを見出しました。
Tetrahedron 67(29) 5168-5175. (2011)

Direct Synthesis of Quinazolines through Copper-Catalyzed Reaction of Aniline-Derived Benzamidines.

キナゾリン骨格は様々な生理活性物質に含まれる重要な構造モチーフの1つですが、その合成ルートはオルト位が官能基化されたアニリンを出発原料とするものがほとんどです。今回 我々は、オルト位が官能基化されていないアニリン誘導体を銅触媒によりアルキニル化及び環化することにより、直接的にキナゾリン類を合成できる新規方法論を確立しました。
Org. Lett. 12(17) 3963-3965. (2010)

Construction of Linked Nitrogen Heterocycles by Palladium(0)-Catalyzed Domino Cyclization of 2-Alkynylaziridines via Ring Expansion with Isocyanate.

2-アルキニルアジリジンは、プロパルギル位にひずんだ三員環を有する複素環化合物であり、含窒素化合物の有用な合成中間体として広く知られています。我々はこれまでに、2-エチニルアジリジ ンがパラジウム触媒とインジウムにより極性転換を引き起こし、アルデヒドへの付加により2-エチニル-1,3-アミノアルコールを立体選択的に生成することを報告しています。今回我々は、アルキン末端に求核剤を 有する2-アルキニルアジリジンに対して、触媒量のPd(PPh3)4とアリールイソシアネートをTHF溶媒中室温下において反応させると、一分子のイソシアネートが挿入されたモノ付加体が収率良く得られることを見出 しました。さらに、過剰量のイソシアネートを用いて低温下において本反応を行うと、二分子のイソシアネートが挿入されたビス付加体を選択的に与えることも併せて明らかにしました。
J. Org. Chem.753396-3400. (2010)

Synthesis of fused and linked bicyclic nitrogen heterocycles by palladium-catalyzed domino cyclization of propargyl bromides.

1,2-ジアミン構造を有する二環性複素環は興味深い生物活性を有するアルカロイドに幅広く存在する重要な骨格です。今回我々は、パラジウム触媒を用いた連続環 化反応により、1,2-ジアミン構造を有する二環性複素環の一挙構築反応を行おうと考えました。検討の結果、両末端にアミン部位を有するプロパルギルブロミドに対して、塩基性条件下メタノール溶 媒中において触媒量のPd(PPh3)4を作用させると、縮環型二環性複素環が収率良く得られることを見出しました。テザー炭素の長さ及び求核部位によっては、連結型複素環が高い選択性で得られることを明 らかにしました。さらに、2-アルキニルアゼチジンを用いた中性条件下における環拡大―連続環化反応にも成功しました。
Chem. Eur. J.16(28) 8410-8418. (2010)

Gold-Catalyzed Intramolecular Alkyne Cycloisomerization Cascade: Direct Synthesis of Aryl-Annulated[a]carbazoles from Aniline-Substituted Diethynylarenes.

縮環型カルバゾール誘導体は、抗癌活性をはじめとする生物活性だけでなく、様々な物理学的特性を有する事が知られていますが、簡便な合成法はあまり知られておりません。そこで我々は、縮環型カルバゾール2の新規合 成法として、アニリン誘導体1の5-endo-dig/6-endo-digの環化による分子内連続反応の開発を行いました。その結果、1に対して金触媒を作用させると目的の連続環化反応が進行し、一挙 に縮環型カルバゾール2が良好な収率で得られる事を見出しました。本反応は、様々な置換基を有する縮環型カルバゾール誘導体を容易に合成することが可能な原子効率の高い反応です。
Adv. Synth. Catal. 352(2) 368-372. (2010)

Efficient Synthesis of Pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imines and Related Tricyclic Heterocycles by SNAr-Type C-S, C-N, or C-O Bond Formation with Heterocumulenes.

Pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imine誘導体(PD 404182)は近年、KDO 8-P synthaseを阻害することで抗菌活性を示す化合物として見出され、多剤耐性菌に有効な新規化合物探索における有用な 重要なリード化合物になりうると考えられています。しかしながら、最適化合物の誘導(lead optimization)に用いることのできる、本化合物およびその誘導体の効率的な合成法は開発されていないため、構造活 性相関研究を行ったという報告は未だなされていません。そこで今回、我々は本化合物及び誘導体の分岐的合成法の開発に着手しました。その結果、オルト位にハロゲン官能基を有する2-Phenyltetrahydropy rimidineに水素化ナトリウムと二硫化炭素もしくはイソチオシアネート、イソシアネートを作用させるとSNAr型反応が進行し、高収率で本誘導体が得られることを見出しました。[PubMed]
J. Org. Chem. 75(1) 265-268 (2010)

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京都大学大学院薬学研究科・薬品有機製造学分野 | ケモゲノミクス分野