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1枚の写真館 「それは細胞が死んでいるのか?」 |
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東京都臨床医学総合研究所に在籍していた私が抗 Fas モノクローナル抗体で細胞が死ぬことを最初に発表した学会での質問である。細胞は自爆するための細胞表層レセプターを持っているという概念 1) は、簡単には受け入れられなかった。モノクローナル抗体をふりかけると細胞が死ぬという怪しげな実験結果を示したのだから、認めない人たちの存在は当然であった。 その後、理解を示してくれる研究者も増え(国内だけでなく海外からも強い興味を示し応援してくれた人たちがいたことは忘れられない)、大阪バイオサイエンス研究所の長田重一さんや伊藤直人さんと Fas の cDNA クローニングを行うことができた。そして、このモノクローナル抗体が細胞表層のレセプター分子に結合して細胞死を誘導することが明らかとなり、投稿した。二人の referee は文句なしに accept すべきということであったが、一人の referee がアポトーシスを主張するなら透過型電子顕微鏡の写真が必要と要求してきた。 DNA ladder のデータも示していたので、このような実験の必要性を最初は感じなかったのだが、論文を accept させるためと考え、東京都臨床研の鮫島正純さんと一緒に電子顕微鏡写真を撮影し、このような典型的なアポトーシスの写真を得ることができた 2) 。そして、この写真がアポトーシス誘導レセプターの概念を印象づけることに大きな役割を果たすこととなった。最初の質問に、真の意味でこたえることができたのである。電子顕微鏡写真を要求した referee の見識に感謝している。 1) Yonehara S, et al: J Exp Med (1989) 169: 1747-1756. |