寄附講座「ナノバイオ医薬創成科学講座」の概要

 部局名  京都大学大学院薬学研究科
 寄附講座の名称  ナノバイオ医薬創成科学講座
 寄付者 東レ株式会社
 担当教員名及び職名
  寄附講座教授  清水一治
  寄附講座教授  嶋田 裕

  寄附講座教授  須藤哲央

教育研究領域の概要

 背景と目的

  最近の工学技術、特にナノテクノロジー・材料技術や分析技術の発展により、ゲノムやタンパク質の特に分子レベルの莫大な情報が蓄積されてきている。これらの情報を基に、システムバイオロジーなどの新たなアプローチによる解析を加える事により、創薬科学は著しく発展する。
  このように、得られた情報をインフォマティックスを活用して解析する技術の進展を背景に、新しいナノテクノロジー・材料技術や分析技術の開発が、われわれを医薬創成、新規診断技術・マーカーの発見、革新的医療技術の創出に導くと期待される。特に、わが国の強みであるナノ・材料技術を活かした革新的技術によるナノバイオの融合研究は、世界をリードする創薬情報を得る機会を与える。また、革新的な分析、解析による情報の獲得だけではなく、画像診断やドラッグデリバリシステムなどの診断、医療、医薬の研究、開発においても、基盤となる材料のナノからのアプローチはこれらの研究の幅を拡げると期待される。
  このような背景のもと、本ナノバイオ医薬創成科学講座では、生体機能ならびに病態の本質を解明を目指して、バイオテクノロジーとナノデバイス・システム研究の融合という分野融合的科学技術の教育、研究を行い,さらに最先端ナノバイオテクノロジーを活用して新たな診断、医療、医薬の創成を図る。
  このように、既存の分野区分を超えた、分野の融合により課題解決に必要な研究者の知恵を自在に結集して新たな領域を開き、イノベーションに適切につなげていきたい、と考えている。

 分野融合、産学連携

  昨今のバイオ関連分析技術の急速な進歩の中にあって、医薬品創成の研究には、生物学的現象を高度にとらえる最先端の分析技術、分析ツールがキーとなる。このような技術、ツールを明確な目的意識を持って活用することにより、従来では困難であった、新たな薬剤の作用機序の発見やそれに基づく新薬、診断マーカー等の創成が期待される。このため、有用な新しい分析技術が実用化されると、世界中の意欲ある研究者がこぞってその技術に取り組もうとするのである。
  わが国は、従来から材料および材料加工技術を中心としたナノの研究に力を入れこれを強みとして、自動車、電気、電子分野において世界を相手に戦ってきた。ここに来てナノ・材料技術はこれらの分野のみならず、バイオとの融合領域にも新しい展開をもたらしつつある。中でも、ナノバイオ融合領域における基礎研究と、その成果を活かした応用研究に大きな成果が得られており、これまでの技術では検出、分析が不可能であった新たな知見も得られて来ている。
  現在のところ、このような取り組みは基礎研究領域にとどまっており、特に診断、医療、医薬の領域においては、十分な活用が図られているとは言い難い。応用面のニーズも取り入れたナノバイオの融合研究を促進するためには、医薬工連携の体制構築、教育の推進が重要と考えられ、バイオの解析に有効な新しいツール、材料の創出と、その結果としての、新たな診断、医療、医薬の創成が期待される。

  本講座では、自ら医薬創成を目指すだけではなく、最先端のナノバイオ工学技術を活かした新しい分析技術を基盤に、積極的に京都大学内の各研究機関との連携や、他大学等の研究機関、臨床機関との「医薬工」連携、また産業界との産学連携を行い、大学における新たな研究推進システムの構築を目指す。