疼痛時の負の情動反応と扁桃体

 痛みには感覚的側面(痛覚)の他、不快感、恐怖、怒り、不安といった情動的な側面があることが知られていますが、この負の情動反応に扁桃体が重要な役割を果たしていることを条件付け場所嫌悪性試験という方法を用いて明らかにしました。また、痛みの中でも体性痛と内臓痛では関与する扁桃体の亜核が異なることを発見しましたが、このような違いがこれら2種類の痛みによって引き起こされる情動の違いに結びついているのかもしれません。


内臓痛(酢酸腹腔内投与)によってはCeAに、一方、体性痛(ホルマリン後肢皮下投与)によってはBLAにおいてc-fos mRNAの発現が誘導

 Neurosci. Lett., 344, 197-200 (2003)

内臓痛(酢酸腹腔内投与)による負の情動反応(場所嫌悪反応)はCeAの損傷によって減弱したが、BLAの損傷では影響なし。一 方、体性痛(ホルマリン後肢皮下投与)による負の情動反応は、どちらの扁桃体亜核を損傷させても減弱

 Eur. J. Neurosci., 18, 2343-2350 (2003)

体性痛(ホルマリン後肢皮下投与)によりBLAにおいてグルタミン酸遊離が促進され、また、BLAへのグルタミン酸受容体拮抗薬の微量投与により疼痛関連場所嫌悪反応が減弱

 Neurosci. Res., 59, 199-204 (2007)

内臓痛(酢酸腹腔内投与)によりCeAにおいてノルアドレナリンの遊離が促進され、また、β-アドレナリン受容体拮抗薬により疼痛関連場所嫌悪反応が減弱

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Copyright (C) 2004 Takayuki Nakagawa, Ph.D., Kyoto University