4.Gタンパク質共役型受容体の |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、最も重要な薬物の標的タンパク質群であり、リガンド刺激に伴うGPCRの構造変化が下流の細胞内シグナル伝達経路の活性化に結びついていると考えられます。テーマ3(膜タンパク質の構造形成原理の解明)でも触れたように、生体膜環境は多種多様な脂質分子で構成されており、脂質組成がタンパク質活性に大きく影響することも良く知られていますので、膜タンパク質であるGPCRの活性は生体膜の脂質によって精妙にコントロールされていると考えられています。従って、生細胞で膜タンパク質の挙動を検出するアプローチは非常に重要です。 近年、生細胞で特定のタンパク質のみを蛍光標識して、共焦点顕微鏡をはじめとする蛍光イメージングで観察する方法が広く用いられるようになりました。2008年ノーベル化学賞でも話題になったように、標的タンパク質を蛍光タンパク質と遺伝子上で融合して細胞に発現させる方法が現在の蛍光標識法のスタンダードになっていますが、蛍光タンパク質は、サイズが比較的大きい・色素を自由に選べない・複数の蛍光タンパク質の発現比コントロールが容易でない、等の理由から、膜タンパク質の構造変化やタンパク質間相互作用を検出するためのツールとして用いるには限界があります。これらの弱点を補う新しい蛍光ラベル法として、蛍光タンパク質よりも大幅にサイズの小さいアミノ酸配列を「タグ」として標的タンパク質に融合して細胞に発現させ、そこに、タグに対して特異的に結合する蛍光標識「プローブ」を外部から加えることで特異的標識を行う「タグ―プローブラベル法」が注目を浴び、活発に研究されています。 我々は最近、ペプチド―ペプチド間相互作用を利用した新しいタグ―プローブラベル法(コイルドコイルラベル法)を開発しました。この方法は(1)蛍光タンパク質の1/5程度の小分子であり、(2)蛍光色素を自由に選べる・多色ラベル比のコントロールが容易、(3)細胞膜に発現している受容体のみを染色できる、等、生細胞での膜タンパク質のラベルに利点の多い方法です。この方法を用いて、GPCRをテトラメチルローダミン等の明るい蛍光色素で標識し、リガンド投与に伴う細胞内への内在化や、受容体の構造変化、受容体間相互作用を高感度で検出する手法を開発しています。 |
【実験手法】 バイオアッセイ(細胞培養)、 分光学(リポソーム調製、蛍光、CD、FTIR、NMRなど) |