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【研究の背景】 我々の研究室では、細胞が死ぬこと、細胞死の研究を行っています。 人の体は、100兆個弱の細胞から成り立っています。細胞は、様々な組織を構築します。我々の体は組織から、また細胞から成り立っているのです。 |
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そして、体を形づくるときに認められる細胞死は、遺伝子の働きで実行されるものであり、積極的に細胞が死ぬという現象なのです。尤もよく知られている発生時の細胞死は、指の形成時に認められるものです。ヒトでは、受精後50日ぐらいで指の間の細胞が死に、指が分離します。また、マウスの胎児でも、指の間の細胞が死に、指が分離します。また、口蓋の形成時やミューラー管の消滅時にも細胞死は認められます。現在では、あらゆる臓器の形成時に細胞死は引き起こされ、正常な発生に必要な現象だと考えられています。
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また、遺伝子の働きによる積極的な細胞死は、発生時に必要なだけではありません。発生が終わった我々の体の中でも、細胞死は積極的に引き起こされています。遺伝子に傷がつき、そのために異常に増殖する能力を獲得した細胞はがんを形作りますが、このような遺伝子に傷がついた細胞の多くは、自らの遺伝子の働きで積極的に死んでいきます。また、免疫の働きによってがん細胞は排除されますが、その時にも、がん細胞は細胞死によって排除されます。その他にも、生体内の様々なところで遺伝子の働きによる細胞死は積極的に実行されており、それによって、我々の体の恒常性が維持されているのです。
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我々の体では、細胞増殖、細胞分化、細胞死を調節するシグナルが相互作用し、お互いに調節し合うことによって、正常な発生や生体での恒常性の維持がなされているのです。 では、遺伝子の働きによる細胞死とは、どのようなものであり、どのようなメカニズムで引き起こされているのでしょう? |
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では、アポトーシスはどの様な遺伝子の働きで引き起こされるのでしょうか?線虫というモデル生物でまず研究が行われました。MITで線虫の研究を行っている Robert Horvitz博士は、ced-3, ced-4, ced-9とegl-1という4つの遺伝子が細胞死を直接調節していることを明らかにしました。その後、ヒトはを含む哺乳類における細胞死の研究がなされ、線虫で細胞死を調節していた4つの遺伝子は、ヒトでも保存され(ced-3とcaspase-9, ced-4とapaf-1, ced-9とbcl-2など, egl-1とbimやpumaなど)、同じように細胞死を調節していることが分かりました。線虫という生物は、長さ約1mmであり、約千個の細胞から成り立つ生物ですが、このような線虫と100兆個弱の細胞から成り立つヒトまで、アポトーシスという細胞死を調節する遺伝子が保存されていたのです。 |
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では、我々ヒトは、線虫から保存された細胞死のシステムしか持っていないのでしょうか?現在では、もう一つ別のアポトーシスを誘導するシステムを我々は持っていることが分かっています。線虫から保存されているアポトーシス誘導経路を内因性経路、もう一つの経路を外因性経路と呼びます。外因性経路とは、細胞表層の受容体、細胞表面に存在するレセプターを刺激することによってアポトーシスが誘導されるという経路です。ヒトの細胞は、自らがアポトーシスで自爆するために、細胞表層のレセプターを持っているのです。言葉を換えて説明すると、我々の体を構成する細胞は、その表面に自爆するためのレセプター分子を発現しているということです。米原は、このような自爆のために機能するレセプター分子である分子を発見し、Fasと命名しました (Yonehara S et al., J Exp Med, 169: 1747-1756, 1989 )。Fasを刺激すると、細胞はアポトーシスに陥るのです (Itoh N, Yonehara S et al., Cell, 66: 233-243, 1991)。 |
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【研究内容】 ◎ プログラムされたネクローシス ◎ caspase-8の様々な機能解析 ◎ 二核四倍体細胞に誘導される新しい細胞死 |
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