[PR] 妊娠検査薬 研究内容




 このページでは、我々の研究室で行っている研究内容を説明します。細胞死という現象は、我々にとって悪い現象ではなく、我々が生きていく上で必要な現象です。
 我々は、遺伝子の働きによる積極的な細胞死の分子機構や生理機能、また細胞死の制御に関わる遺伝子や分子の様々な機能を解明することによって、個体の発生、がんの発生や排除、さらに免疫システムの調節の本質にせまることを目的として研究を行っています。

主な研究項目

◎ Fasの機能解析

◎ プログラムされたネクローシス

◎ caspase-8の様々な機能解析

◎ 二核四倍体細胞に誘導される新しい細胞死



◎ Fasの機能解析

 我々の研究室では、自爆のレセプターFasが誘導するアポトーシスの分子機構や機能を研究しています。Fasは、免疫系で自分に強く反応する細胞をアポトーシスで除去する役割を持ちます。Fasが働かないと、自己免疫性の関節リウマチや腎臓炎などの全身性の自己免疫疾患を発症します。また、がん細胞やウイルス感染細胞の除去にもFasは関わっており、がんの抑制にも機能していることが分かっています。

 最近になって、我々は、Fasの遺伝子をノックアウトしたマウスで、アレルギー性疾患の発症すること、そのマウスでは、アレルギーの原因物質であるIgE抗体が異常に多くつくられていることを見つけました(Takahashi S, et al., Int Immunol, 25: 287-293, 2013)。そして、このIgE産生を増強させる新しい細胞を見いだし (Fukuoka A, et al., Int Immunol, 25: 373-382, 2013)、その研究を行っています。自爆のレセプター分子Fasがアレルギーにも関与することが分かったので、そのメカニズムと、その制御方法の開発を研究しています。アレルギー疾患の制御法の開発に結びつくことができればと期待しています。

Back to TOP



◎ プログラムされたネクローシス

 先に、プログラムされた細胞死は、遺伝子の働きによって引き起こされる積極的な細胞死であり、アポトーシスの形態をとること、また、受動的な遺伝子の働きに依存しない細胞死はネクローシスの形態をとることを説明しました。 
 一方、アポトーシスという細胞死の研究は進展した結果、アポトーシスではない遺伝子の働きに支配された細胞死の存在することが分かってきています。従来は、遺伝子の働きによって引き起こされるのではないとされていたネクローシスの中にも、遺伝子の働きによって積極的に引き起こされるものがあることが分かってきました。遺伝子の働きによってプログラムされたネクローシスです。

 このプログラムされたネクローシスを抑制する遺伝子が分かりました。その分子は、自爆のアンテナ分子であるFasを介するアポトーシスの誘導に必要不可欠なcaspase-8という遺伝子です。興味深いことに、caspase-8という遺伝子は、自爆のアンテナ分子からのアポトーシス誘導シグナルを伝達する一方で、プログラムされたネクローシスを抑制しているのです。我々の研究室では、caspase-8が抑制するプログラムされたネクローシスの研究も行っています。

Back to TOP



◎ caspase-8の様々な機能解析

 caspase-8という分子の機能を、別の側面からも我々は研究しています。caspase-8遺伝子のノックアウトマウスは生まれてきません。現時点では、caspase-8遺伝子のノックアウトマウスの胎児はアポトーシスが抑制されるためではなく、ネクローシスが亢進するために死亡すると考えられています。

 一方我々は、caspase-8が別の機能を有することを見いだしています。それは、細胞分化の調節です。caspase-8が機能しないと、細胞の分化誘導シグナルが異常に亢進するのです。このように、アポトーシスの誘導に必要不可欠な遺伝子が、ネクローシスの抑制に機能する他に、細胞分化にも劇的な機能を有していることが分かっていきました。先に、細胞増殖、細胞分化、細胞死のシグナルが相互作用し、お互いに調節し合うことが重要であると説明しましたが、このcaspase-8という遺伝子は、この遺伝子一つだけの機能で多様な細胞死と細胞分化の両方を調節しているのです。

Back to TOP



◎ 二核四倍体細胞に誘導される新しい細胞死

 我々の研究室では、もう一つ新しい細胞死の研究を行っています。細胞は増殖する時に、遺伝子をコードする染色体を二倍に増やします。そして、細胞が分裂するときには、染色体が凝縮し、二つの娘細胞に正確に染色体を分配することが必要です。染色体の凝縮が完成する前に細胞分裂が開始されると、染色体の分配がうまく進まず、アナフェーズブリッジという分離された染色体間にDNAが橋渡しをするような構造が現れ、細胞核の分裂や細胞質の分裂が完遂しません。その結果、二核四倍体の細胞が生まれます。このような二核の細胞は、ゲノムが不安定であり、様々な遺伝子の変異や染色体の異常を生じやすくなり、細胞のがん化に向かうことが知られています。

 我々は、このような二核の細胞にアポトーシスではなく、遺伝子の働きによる積極的な細胞死の誘導されることを見つけています (Kobayashi Y and Yonehara S, Cell Death Differ, 16: 139-150, 2009)。

 この細胞死は、アポトーシスでもネクローシスでもありません。また、eEF1A1というハウスキーピング遺伝子の発現抑制が、この細胞死の誘導には必要です。つまり、遺伝子の働きによる積極的な細胞死が誘導されているであり、この細胞死は新しいプログラムされた細胞死なのです。

Back to TOP