受動的回避試験

この試験は、暗室に進入した際に電気刺激を与えることにより、暗室への進入と痛みである恐怖を関連付けて記憶させる試験である。

測定方法

  1. 下図に示す明暗箱から成る装置を用いる。
  2. 2) まずマウスを明室に入れ、暗室に入るまでの時間(latency)を最大120秒として測定する。また、暗室に入った際には、進入と同時に扉を閉めると共に電気刺激(2 mA, 1 sec)を与える。(この際、扉を閉めるのと同時に電気刺激を与えるのを一人で行うのは困難なため、もう一人協力者が必要となる。1度役割分担を決めると個人差によるバラツキを防ぐため、役割は固定するほうが望ましい。また、マウスの尻尾の付け根が暗室へ入った時点を暗室への進入と定義する
  3. 2)の試行を明室に120秒間留まるまで、最大5回繰り返す。(それぞれの試行の間隔は3分と固定する)
  4. 3日後、明室にマウスを入れ、明室に留まった時間を最大300秒として測定する。

注意点.

  1. 2)の試行に3分の間隔があるため、その時間を利用することで、同時に2匹測定することが可能である。
  2. 測定中に糞や尿により装置が汚れるため、水道水で洗い流しエタノールで消毒することが必要である。
  3. この試験はマウスに電気刺激を与えるため、非常に浸襲性が高いとされる。よって、この行動試験を行う際には、他の行動試験をし終えた後で最終的に行うのが望ましい。
  4. この試験で差があった場合、マウスの痛みに対する感受性が変化している可能性も考えられるため、感受性を調べる試験を行わなければならない。具体的には、暗室にマウスを入れ刺激電流を徐々に強く段階をおって与えていく。その際、マウスが身震いを起こした強度(freezing)、泣き声をあげた強度(vocalizing)、飛び跳ねた強度(jumping)を記録することで比較検討することができる。ただし、身震いや泣き声は微妙な違いであるため、複数の人間で評価するほうが望ましいと考えられる。

評価方法
初日に行う試験から、試行毎の暗室への進入に要した時間(transfer latency time)と暗室に120秒間留まり続けるのに要した試行の回数(trials to criterion)を短期記憶として評価することができる。さらに、3日後暗室に留まり続けた時間(retention time)から長期記憶を評価することができる。


参考文献
Brain Res. 716, 29-38 (1996)
Nat. Neurosci., 7, 595-601 (1998)

試験装置


 
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