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TRICチャネル

小胞体からのCa2+放出は筋収縮やホルモン分泌などを含む多彩な生理機能を調節し、様々な細胞内シグナル伝達系に関与しています。効率的な小胞体Ca2+放出が成立するためには、陽イオンであるCa2+の流出に伴い発生する小胞体内荷電をカウンターイオンによって中和されることが重要だと推定されていました。しかしながら、カウンターイオンの膜透過を仲介するイオンチャネルの実体は長い間不明であり、その分子同定と生理機能を解明することが切望されています。我々のグループは動物細胞の小胞体膜や核膜に分布するTRICチャネルを発見しました。TRICチャネルは、3本の膜貫通セグメントを有するタンパク質が銃弾様形状の三量体を形成することにより構成されていました(参考図1)。人工脂質二重膜への再構成実験において、TRICチャネルは一価陽イオン(ナトリウムとカリウムイオン)選択的に透過させるイオンチャネルであることが判明しました。一方、TRICチャネル欠損マウスは心不全による胎生致死となり、その心筋細胞では小胞体Ca2+放出が著しく障害されていました。さらに、TRICチャネル欠乏骨格筋においては、カリウムイオン透過性の低下に起因する小胞体Ca2+放出の障害が観察されました。以上の結果は、TRICチャネルが細胞内ストアからのCa2+放出と同調して機能するカウンターイオンチャネルであることを示しており、生理学領域の積年に渡る重要命題に対して明確な解答を与えることになりました(参考図2)。一方、TRICチャネルについては、循環器や神経疾患との関連や、新規創薬標的としての重要性などの応用研究の視点からも今後注目されます。


主要発表論文:
1.Yazawa, M. et al. TRIC channels are essential for Ca2+ handling in intracellular stores. Nature 448, 78-82, 2007.
2. Yamazaki, D. et al. Essential role of TRIC-B channel in Ca2+- handling of alveolar epithelium and perinatal lung maturation. Development 136, 2355-2361, 2009.
3. Yamazaki, D. et al. TRIC-A Channels in Vascular Smooth Muscle Contribute to Blood Pressure Maintenance. Cell Metab., 14, 231-241, 2011.


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