研究紹介

1. 細胞内抗体送達ペプチドL17Eと類縁体
膜溶解性クモ毒ペプチドM-lycotoxin配列中の17位の疎水性アミノ酸ロイシンを親水性のグルタミン酸に置換したペプチドL17Eは,細胞膜の透過性を一過的に高める作用を持ちます.L17Eと抗体を同時に細胞培養液に添加することによって,効果的な抗体のサイトゾル送達を達成します.
関連論文
Nat. Chem. 2017, 9, 751-761. doi: 10.1038/nchem.2779
Mol. Pharm. 2019, 16, 2540-2548. doi: 10.1021/acs.molpharmaceut.9b00156
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 19990-19998. doi: 10.1002/anie.202005887

2. コアセルベート(マイクロ濃縮体)を用いるIgG抗体の細胞内送達
私たちはL17Eの多量体と負に荷電させたIgGの混合により直径数µmの液滴様複合体(コアセルベート/マイクロ濃縮体)が形成されることを見出しました.マイクロ濃縮体が細胞膜と接すると,マイクロ濃縮体を絡め取るような細胞膜のダイナミックな構造変化とIgGの細胞内流入が誘起されます.私たちは種々の送達系の設計とこの現象の誘導原理の理解を通して,IgGの高効率細胞内送達系の樹立を目指すとともに,細胞機能の調節や医療への展開の可能性を探ります.
関連論文
Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 19804-19812. doi: 10.1002/anie.202105527.
Bioconjug. Chem. 2024, 35, 1888-1899. doi: 10.1021/acs.bioconjchem.4c00344.