概要
医薬品開発は、創薬ターゲット探索、リード化合物の創成・最適化、有効性・安全性評価、臨床研究等、多岐に渡る一連のプロセスからなります。近年、従来の流れに沿って各プロセスを個別に進めるだけでは開発が困難な対象化合物が多く、新たにプロセス全体を俯瞰した開発が求められています。従ってこれからの創薬科学者には、個別の専門領域のスペシャリストの資質のみならず、医薬品開発プロセス全体を視野に分野横断的な知識、技能、態度を兼ね備えていることが不可欠となります。
現在、京都大学薬学部・薬学研究科では、薬学における“創”と“療”の拠点形成を教 育・研究の基本的理念として掲げ、大学設置基準に基づき、学部教育においては、平成18年度に導入された高度な薬剤師教育を目指す6年制教育制度と、創薬研究者を初めとする多様な人材の養成を目的とする4年制教育制度を並置し、各領域でのスペシャリスト養成を目指して教育を進めています。各制度の学生が他方の制度のカリキュラムを履修して相互に科目を取り合うことができるよう配慮し、お互いに断片的には各領域に関する学習が可能な状況にありますが、分野横断 的な教育を提供できる環境には程遠いのが現状です。
このような背景のもと、今回の取組みは、これからの創薬に求められる能力を育成するため、現在の個別の専門領域のスペシャリストの資質育成教育に加え、医薬品開発を俯瞰的に捉え患者に良質の薬物治療を提供するという薬学の本質に関わり、統一的に必要とされる薬学総合基礎教育を新規に展開することを目的として、新薬学教育制度下での各学科の枠を超えて、医薬品研究現場への参加・体験型学習及びモデル医薬品開発・医療応用事業への参加を想定した問題解決型の演習・実習を中心とした新たな教育カリキュラム「創薬・育薬力育成プログラム」を構築します。さらに、その成果を高学年、大学院教育で進展させることによって分野横断的な創薬・育薬力を持った先導的創薬研究リーダーを育成するための横断的統合型教育のプラットフォームを築き、学士力を総合的に高める教育システムを構築します。