TOP>融合研究コース 平成17年度 研究報告
 

タンデム型Mannich-oxidation反応
を利用したTaxol誘導体合成

薬品合成化学分野  畑  誠司

研 究 指 導 主 任 : 薬品合成化学分野 教授 富岡   清

研究指導協力者 : 分子微生物学分野 教授 河合 明彦

研究内容

背景

 エステルをLDA等の強塩基で処理して容易に調整できるリチウムエノラートは最も基本的な求核反応剤の一つであり、炭素-炭素結合形成を信頼性高く可能とするための第一選択肢になっている。しかし最も単純エステルである酢酸エステルから調整したリチウムエノラートはパラ-メトキシアニリンとベンズアルデヒドから調整する最も基本的なイミンとの不斉付加反応では、何故かは不明であったが、期待する生成物を与えないという問題点を抱えていた。酢酸メンチルエステルとLDAから反応性の高いLDA-エノラート錯体を調整し、イミンと反応させると、付加体ジアニオンを経由し期待する不斉付加反応に成功した。

 次いで付加体ジアニオン4の酸化によるα-ヒドロキシル化に取り組んだ。LDAと錯形成させたエステルエノラート1とイミン2の反応によって発生するジアニオン3は活性化されたエノラート反応種である。ワンポットでアニオンを求電子剤で捕捉できれば二反応を一挙に行える効率の反応を構築できる。

 タキソール系制がん剤6のC-13位側鎖の前駆体は反応のジアニオン中間体3を酸化すれば一挙に構築可能であり、二段階の立体選択的反応の応用としても面白い。先ずジアニオン3を発生させ、次いでオキサアジリジン4で酸化した。2.5当量のLDAと錯形成させた2.0当量のエステルエノラート1のTHF溶液を滴下した後-30゚Cで2時間攪拌し、ジアニオン3を発生させた。次いで、4のTHF溶液を-78゚Cで滴下し、同温度で30分攪拌した。酸化剤として4を用いると66%、synanti = 96 :4 と高選択的に所望のsyn - 5 を得ることができた。さらに、DABCO共存下で酸化を行うとsynanti = 98.5 :1.5 まで向上させることができた(Scheme1)。更にsyn - 5 は、NicolaouらによるTaxol の全合成の際に用いられるラクタム7へ変換することも分かっている。詳細な検討を加えて実践的な合成反応を構築したい。


Scheme1

目的

 イミンとして2以外のものを用いても蒸気タンデム反応は同様の結果で進行すると期待できるため、様々なTaxol 誘導体C-13位の側鎖を合成することが可能と考えられる。これを用いた高活性なTaxol 誘導体探索を行うことを目的とする。

方法・期待される成果:Ph基に種々の置換基を導入したイミン、並びに他の芳香族イミンを用いてタンデム反応を行うことによりTaxol 類縁体を合成する。これによってより高活性かつ低毒素の新規化合物の開発が期待できる。


 
 
 
 
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