ATP Binding Cassette (ABC)トランスポーターの構造薬理学
ATP Binding Cassette (ABC)トランスポーターとは、共通性の高いアミノ酸配列を示すATP加水分解酵素活性を担う領域を持つ膜貫通型タンパク質のことで(1)、 ATPを自ら加水分解して得られるエネルギーを利用して化合物を能動輸送することができます。 そのなかでも、多種多様な化学構造の分子を細胞外へと輸送する多剤排出トランスポーターは、体外から侵入する異物を排除する生体防御の要として機能します。しかし、「薬」も生体にとっては異物であり、同様に排出してしまうことから薬物の吸収を低下させる原因ともなっています。また、人に感染する細菌や酵母の薬剤耐性の獲得にも大きく関与しています。
我々は、ABCBトランスポーターの分子構造を解明し、その分子構造の動きと作用の仕組みを化学の言葉で明らかにすることで、この問題の解決を考えようと研究に取り組んでいます。 かつては、膜タンパク質は精製も結晶化も困難な対象の代表でした。新たに発見した大量調製法の構築、cryoEM構造解析技術によってこの困難を解決し、構造を基盤とした分子メカニズムの理解に取り組んでいます。
(1) Boumendjel, A., Boutonnat, J., Robert, J., (Eds.) ABC Transporters and Mutidrug Resistance, Wiley. (2009)