2.アルツハイマー病発症機構の解明と
予防・治療法の開発


 アルツハイマー病は、高齢になるほど頻発する認知障害を引き起こす疾患で、世界中で根治的治療法の確立が切望されており、発症機構の解明が急務です。
 アルツハイマー病の病理学的特徴の一つにアミロイドβ蛋白質(Aβ)の凝集・沈着があり、これが脳内で最も早期に発見される変化であることから、本来可溶性のAβが凝集・不溶化し神経細胞毒性を発現することがアルツハイマー病の発症において重要な役割を果たすと考えられています。
 Aβはβアミロイド前駆体蛋白質から切りだされ、おもに40もしくは42残基のアミノ酸からなる分子種が生じます。このうち42残基のアミノ酸からなるAβ1−42のほうが、凝集能・神経毒性が高いことが知られていますが、凝集のメカニズムに関してはいまだ明らかではありません。
 また、脳に沈着したAβは、神経細胞中に豊富に存在するスフィンゴ糖脂質であるGM1ガングリオシド(GM1)と結合していることが明らかにされており [K. Yanagisawa et al. (1995) Nat. Med.1062-6]、GM1-Aβ間の相互作用がAβ凝集機構の、ひいてはアルツハイマー病発症機構の解明の手がかりとして非常に重要であると考えられます。

 当研究室ではGM1が生体膜中でスフィンゴミエリン、コレステロールなど共に脂質ラフトと呼ばれるマイクロドメインを形成していることに着目し、この脂質ラフトの組成変化がGM1のAβとの結合能の獲得、引き続くAβの凝集に関与している可能性が高いと考え、ラフト様人工脂質膜を用いてGM1-Aβ間の相互作用を検討してきました。

 これまでに、GM1がラフト様膜中でコレステロール濃度依存的にクラスターを形成すること、可溶性のAβがこのガングリオシドクラスターを特異的に認識し結合することで、βシートに富むコンフォメーションへと変化すること、そしてこの結合型Aβが核(seed)となってAβの凝集が促進されることを明らかにし、Aβ凝集モデルとして提唱してきました。
 また、生細胞に対してAβがどのような挙動を示すのかを可視化することにも成功しています。

【実験手法】

バイオアッセイ(細胞培養、細胞毒性など)
分光学(リポソーム調製、蛍光、CD、FTIR、NMRなど)
共焦点レーザー顕微鏡
SEC(サイズ排除クロマトグラフィ)



English


1.抗菌性ペプチドの作用機構の解明と創薬への展開

2.アルツハイマー病発症機構の解明と予防・治療法の開発

3.膜タンパク質の構造形成原理の解明

4.Gタンパク質共役型受容体の機能制御法の開発

5.NMRによる蛋白質の動的立体構造解析


* 主な業績

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