インビボ画像解析法による脳病態の解明

静脈内注射用O-15標識O2剤(injectable [15O]O2)によるラット脳酸素代謝率の測定

脳酸素摂取率(OEF)、脳酸素代謝率(CMRO2)測定は脳循環障害の評価に非常に有用であり、臨床ではPETを用いた[15O]O2ガス吸入法により行われている。しかし、小動物を用いた基礎実験では吸入ライン中の高放射能がアーチファクトとなるため[15O]O2ガス吸入法の適用は非常に困難であった。

そこで我々は、周囲高放射能の影響を受けずに小動物でのOEF、CMRO2測定を可能とすることを目的として、静脈内注射用O-15標識O2剤(以下injectable [15O]O2)を開発した。すなわち、人工肺を介して血液(血球)中に[15O]O2を取り込ませることで、小動物PET撮像が可能な比放射能を有する[15O]O2標識血液(injectable [15O]O2)を開発した。

これまでに、本剤を正常ラット・中大脳動脈永久閉塞モデルラットに尾静脈内投与し、頭部PET撮像を行うことで、小動物においてもOEF、CMRO2の定量的測定が可能であることを示してきた(下図スライド)。さらに最近では自然発症高血圧ラット(Spontaneously Hypertensive Rat, SHR)を用いてinjectable [15O]O2 – PET撮像を実施することにより、高血圧が脳卒中発症後の障害を増悪する可能性を見出してきている。

本法を用いることにより、従来不可能であった小動物でのOEF、CMRO2が非侵襲的に繰り返し定量可能となるのみならず、無麻酔の大動物実験でも吸入トレーニングを必要としないため、脳循環障害の基礎的研究に非常に有用と考えられる。

また、上述の通り、Injectable [15O]O2は周囲高放射能の影響を減ずることが可能であることから、最近、[15O]O2ガス吸入法では肺中の高い放射能が問題となる心筋の酸素代謝測定への応用も試み、一定の成果を挙げている。

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主要論文

  • PET O-15 cerebral blood flow and metabolism after acute stroke in spontaneously hypertensive rats.
    Brain Res. 2008, 1212, 18-24.
  • Estimation of oxygen metabolism in a rat model of permanent ischemia using positron emission tomography with injectable 15O-O2
    J Cereb Blood Flow Metab. 2006, 26(12):1577-1583.
  • Availability of N-isopropyl-p-[125I]iodoamphetamine (IMP) as a practical cerebral blood flow (CBF) indicator in rats.
    Nucl Med Biol. 2004, 31(6):811-4.
  • Development of injectable O-15 oxygen and estimation of rat OEF.
    J Cereb Blood Flow Metab. 2003, 23(6):671-6.

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