がんの病態分析から治療に向けて

炭酸脱水酵素-IX を標的としたセラノスティクス薬剤の開発

薬物治療の際に体内動態と標的選択性について、画像診断薬と治療薬との間に大きな乖離が存在することがあり、さらに、患者によって薬物の体内動態が異なることが、治療効果に多大な影響を与えている。一方、画像診断(Diagnostics)と治療(Therapeutics)、それぞれのモダリティを融合したものと定義されるセラノスティクス(Theranostics)は、画像診断と治療を並行して行うことを可能とし、患者個々の病気の性質を的確にとらえ、効果的な治療を的確に進めていくことによって、患者に大きな利益を寄与することができる個別化医療(テーラーメイド医療)に繋がると考えられる。

 

固形腫瘍には、細胞増殖に対して血管からの酸素供給が追い付かない低酸素領域が存在する。この領域は、がんの化学療法や放射線治療に対する抵抗性を示し、腫瘍の増殖・転移に関与すると考えられている。一方、炭酸脱水酵素-IX (CA-IX)は二酸化炭素と水から水素イオンと炭酸水素イオンを産生する生体反応を触媒する酵素であり、低酸素がん細胞膜表面に特異的に発現していることが知られている。

そこで、SPECTまたは放射性同位元素内用療法を目的として111Inまたは90Yをそれぞれ配位させ、CA-IXに対する特異的親和性が報告されているウレイドスルホンアミド誘導体を2分子導入した2価放射性金属錯体である[111In]US2および[90Y]US2を設計した。

 

 

CA-IX高発現腫瘍移植モデルマウスに[111In]US2を投与し、SPECT撮像を行ったところ、腫瘍を選択的かつ明瞭にイメージングすることに成功した。続いて、[90Y]US2をモデルマウスに投与したところ、生理食塩水投与群と比較して、マウス生存期間が有意に延長した。これらの結果より、[111In]US2および[90Y]US2は、CA-IXを標的とした固形腫瘍の画像診断および治療を可能とすることが示され、がんのセラノスティクスに有用であることが示された。

 

主要論文

  • PET Imaging and Pharmacological Therapy Targeting Carbonic Anhydrase-IX High-expressing Tumors Using US2 Platform Based on Bivalent Ureidosulfonamide
    PLoS One in press
  • Development of 99mTc-Hydroxamamide Complex as Probe Targeting Carbonic Anhydrase IX
    Mol Pharm 16(4) 1489-1497 (2019)
  • Cancer radiotheranostics targeting carbonic anhydrase-IX with 111In- and 90Y-labeled ureidosulfonamide scaffold for SPECT imaging and radionuclide-based therapy
    Theranostics 8(11) 2992-3006 (2018)

 

ページの先頭に戻る