Research

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2010

Direct Synthesis of Quinazolines through Copper-Catalyzed Reaction of Aniline-Derived Benzamidines.

キナゾリン骨格は様々な生理活性物質に含まれる重要な構造モチーフの1つですが、その合成ルートはオルト位が官能基化されたアニリンを出発原料とするものがほとんどです。今回 我々は、オルト位が官能基化されていないアニリン誘導体を銅触媒によりアルキニル化及び環化することにより、直接的にキナゾリン類を合成できる新規方法論を確立しました。
Org. Lett. 12(17) 3963-3965. (2010)

Affinity selection and sequence-activity relationships of HIV-1 membrane fusion inhibitors directed at the drug-resistant variants.

新興・再興感染症治療薬の開発において、病原体のゲノム配列は最新の技術により極めて迅速に解析可能であることから、病原体のDNA配列情報をもとに最適な候補化合物をいかに 効率的に探索・設計するかが重要です。我々は、薬剤耐性HIVウイルスのDNA配列をもとに、ウイルス侵入に関与するタンパク質機能を阻害するペプチドをライブラリー混合物から効率的に選択する手法を 開発しました。本法ではウイルス粒子を用いることなく簡便にスクリーニングを実施可能であり、HIV以外の多様なウイルスに対する治療薬開発にも適用可能です。
Med. Chem. Commn. 1(4) 276-281. (2010)

Kinesin spindle protein (KSP) inhibitors with 2,3-fused indole scaffolds..

微小管モータータンパク質Eg5は、細胞分裂期において重要な役割を果たしており、新たな抗癌剤の分子標的として注目を集めています。Eg5阻害活性を示す天然物もしくはその類縁化合物として、複雑な化学構造を もつterpendole E などが報告されていました。我々は一連の化合物の共通構造から、Eg5阻害活性に必要な最小構造が縮環インドール構造であると想定し、これらを出発点とするEg5阻害剤の構造活性相関研究を展開し ました。その結果、2位もしくは3位に置換基を有するカルバゾール誘導体やβ-カルボリン骨格を有する天然物がEg5阻害活性を示すことを見出しました。[PubMed]
J. Med. Chem. 53(13) 5054-5058. (2010)

Ring-Construction/Stereoselective Functionalization Cascade: Total Synthesis of Pachastrissamine (Jaspine B) through Palladium-Catalyzed Bis-cyclization of Propargyl Chlorides and Carbonates.

Pachastrissamineは沖縄近海に生息する海綿動物Pachastrissa sp. より抽出された天然物であり、様々な癌細胞株に対して細胞毒性を示すことが知られています。今回我々は、パラジウム触媒による ブロモアレン及びプロパルギル化合物の連続環化反応を鍵反応としたpachastrissamineの全合成を計画しました。基質となるブロモアレン、プロパルギル化合物はGarner's aldehydeより合成しました。パラジウム 触媒を用いて検討を行ったところ、それぞれ良好な収率で、目的のテトラヒドロフラン環を構築することに成功し、pachastrissamineの全合成を達成しました。ブロモアレンを用いた経路では合成経路終盤に長鎖 アルキル基を導入するため、様々なアルキル基を有する誘導体の効率的な合成が可能です。一方、プロパルギル化合物を基質とした経路は短工程でpachastrissamineを与えます(7工程、26%)。また、パラ ジウム触媒を用いたプロパルギル化合物の環化反応において、脱離基と求核部位の相対立体配置によって連続環化の反応性が異なることを明らかにしました。
J. Med. Chem. 75(11) 3831-3842. (2010)

Stereoselective divergent synthesis of four diastereomers of pachastrissamine (jaspine B).

Pachastrissamineは2002年に沖縄近海に生息する海綿動物Pachastrissa sp.より抽出されたスフィンゴシン類縁体であり、様々な癌細胞株に対して細胞毒性を示すことが知られています。 今回我々は、pachastris¬samineに存在する3つの不斉中心の活性に対する影響を精査することを目的として、Garner’s aldehydeから2工程で得られるジオール2を共通の合成中間体として、4種類のジアステ レオマーを分岐的かつ立体選択的に合成できる方法論を確立しました。
J. Org. Chem.753843-3846. (2010)

Construction of Linked Nitrogen Heterocycles by Palladium(0)-Catalyzed Domino Cyclization of 2-Alkynylaziridines via Ring Expansion with Isocyanate.

2-アルキニルアジリジンは、プロパルギル位にひずんだ三員環を有する複素環化合物であり、含窒素化合物の有用な合成中間体として広く知られています。我々はこれまでに、2-エチニルアジリジ ンがパラジウム触媒とインジウムにより極性転換を引き起こし、アルデヒドへの付加により2-エチニル-1,3-アミノアルコールを立体選択的に生成することを報告しています。今回我々は、アルキン末端に求核剤を 有する2-アルキニルアジリジンに対して、触媒量のPd(PPh3)4とアリールイソシアネートをTHF溶媒中室温下において反応させると、一分子のイソシアネートが挿入されたモノ付加体が収率良く得られることを見出 しました。さらに、過剰量のイソシアネートを用いて低温下において本反応を行うと、二分子のイソシアネートが挿入されたビス付加体を選択的に与えることも併せて明らかにしました。
J. Org. Chem.753396-3400. (2010)

Synthesis of fused and linked bicyclic nitrogen heterocycles by palladium-catalyzed domino cyclization of propargyl bromides.

1,2-ジアミン構造を有する二環性複素環は興味深い生物活性を有するアルカロイドに幅広く存在する重要な骨格です。今回我々は、パラジウム触媒を用いた連続環 化反応により、1,2-ジアミン構造を有する二環性複素環の一挙構築反応を行おうと考えました。検討の結果、両末端にアミン部位を有するプロパルギルブロミドに対して、塩基性条件下メタノール溶 媒中において触媒量のPd(PPh3)4を作用させると、縮環型二環性複素環が収率良く得られることを見出しました。テザー炭素の長さ及び求核部位によっては、連結型複素環が高い選択性で得られることを明 らかにしました。さらに、2-アルキニルアゼチジンを用いた中性条件下における環拡大―連続環化反応にも成功しました。
Chem. Eur. J.16(28) 8410-8418. (2010)

Gold-Catalyzed Intramolecular Alkyne Cycloisomerization Cascade: Direct Synthesis of Aryl-Annulated[a]carbazoles from Aniline-Substituted Diethynylarenes.

縮環型カルバゾール誘導体は、抗癌活性をはじめとする生物活性だけでなく、様々な物理学的特性を有する事が知られていますが、簡便な合成法はあまり知られておりません。そこで我々は、縮環型カルバゾール2の新規合 成法として、アニリン誘導体1の5-endo-dig/6-endo-digの環化による分子内連続反応の開発を行いました。その結果、1に対して金触媒を作用させると目的の連続環化反応が進行し、一挙 に縮環型カルバゾール2が良好な収率で得られる事を見出しました。本反応は、様々な置換基を有する縮環型カルバゾール誘導体を容易に合成することが可能な原子効率の高い反応です。
Adv. Synth. Catal. 352(2) 368-372. (2010)

Synthesis and Biological Evaluation of Selective CXCR4 Antagonists Containing Alkene Dipeptide Isosteres.

当研究室では、カブトガニの自己防御ペプチドpolyphemusin IIの構造活性相関研究を通して、ケモカイン受容体CXCR4選択的アンタゴニストであるFC131を見出しています。本研究 では、FC131を構成するArg-Arg、Arg-Nal部位にアルケン型およびフルオロアルケン型イソスターを導入したFC131誘導体を合成し、活性を評価することで、これらの部位のペプチド結合のCXCR4ア ンタゴニスト活性における寄与を検証しました。[PubMed]
Org. Biomol. Chem. 8(3) 616-621 (2010)

Efficient Synthesis of Pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imines and Related Tricyclic Heterocycles by SNAr-Type C-S, C-N, or C-O Bond Formation with Heterocumulenes.

Pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imine誘導体(PD 404182)は近年、KDO 8-P synthaseを阻害することで抗菌活性を示す化合物として見出され、多剤耐性菌に有効な新規化合物探索における有用な 重要なリード化合物になりうると考えられています。しかしながら、最適化合物の誘導(lead optimization)に用いることのできる、本化合物およびその誘導体の効率的な合成法は開発されていないため、構造活 性相関研究を行ったという報告は未だなされていません。そこで今回、我々は本化合物及び誘導体の分岐的合成法の開発に着手しました。その結果、オルト位にハロゲン官能基を有する2-Phenyltetrahydropy rimidineに水素化ナトリウムと二硫化炭素もしくはイソチオシアネート、イソシアネートを作用させるとSNAr型反応が進行し、高収率で本誘導体が得られることを見出しました。[PubMed]
J. Org. Chem. 75(1) 265-268 (2010)