Research

[2018] [2017] [2016] [2015] [2014] [2013] [2012] [2011] [2010] [2009] [2008] [2007] [2006]

2012

Lewis-acid-mediated ring-exchange reaction of dihydrobenzofurans and its application to the formal total synthesis of (–)-quinocarcinamide

今回我々は、Boc 保護されたジヒドロイソキノリン1に対して、ルイス酸としてSiCl4とBF3・Et2Oを作用させると、室温化で速やかにオキサゾリジノン2が得られることを見出しました。本反応は、通常安定なジヒドロベンゾフランが温和な条件下開裂し、環交換生成物を与える点で興味深い反応です。種々のジヒドロベンゾフランを用いた検討により、縮環型三環性イソキノリン骨格が本環交換反応に必要な構造的要因であることを見出しました。また本反応を用いて、(–)-quinocarcinamideの形式不斉全合成を達成しました。
Tetrahedron Lett. 53(46) 6273-6276. (2012)

Structure–activity relationship study of pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imine derivatives for potent anti-HIV agents.


PD 404182は、HIVやHCVに対して抗ウイルス作用を示すことが知られています。今回我々は、PD 404182の9位に様々な置換ベンゼンや複素環を導入した各種誘導体による構造最適化研究を行いました。このうちメトキシフェニル基やベンゾジオキソラン環2を有する誘導体がPD 404182の約3倍の活性を示し、疎水性のビアリール構造が標的物質に対して効果的に作用する可能性が示唆されました。
Bioorg. Med. Chem.20(21) 6434-6441. (2012)

Total Synthesis of (-)-Quinocarcin by Gold(I)-Catalyzed Regioselective Hydroamination.

Quinocarcinは1983年に高橋と富田らにより単離されたテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであり、リンパ性白血病細胞に対して高い増殖阻害活性を有する事が知られています。今回我々は、遷移金属触媒を用いた薗頭カップリング-環化反応によるquinocarcinの不斉全合成を達成しました。我々の合成戦略は (1) ブロモアレン1 のシス選択的分子内アミノ化反応による2,5-cisピロリジン2の合成、(2) 金触媒によるアルキン3の6-endo-dig選択的分子内ヒドロアミノ化反応、(3) ルイス酸を用いたジヒドロベンゾフラン4の開環反応を特徴としています。本合成法は、2つのユニットを合成終盤でカップリングさせる収束的な合成戦略を用いているため、関連アルカロイドの多様性指向型合成にも有用であると考えています。
Angew. Chem., Int. Ed.51(36) 9169-9172. (2012)

Gold(I)-Catalyzed Regioselective Inter-/Intramolecular Addition Cascade of Di- and Triynes for Direct Construction of Substituted Naphthalenes.

触媒的多連続反応は複雑な骨格を一挙に構築することが可能であることから、合成の短工程化や廃棄物の低減に有用な反応です。我々は金触媒を用いた外部求核剤による位置選択的な分子間/分子内付加反応によりナフタレン誘導体を一挙に構築することに成功しました。また、アルキンユニットが伸張したトリイン基質を用いることで、一挙にクリセン誘導体が得られることも併せて示しました。本反応は、外部求核剤を用いてジインの末端アルキン側に置換基を選択的に導入することに成功したはじめての例であり、置換ナフタレンおよびクリセンの多様性指向型合成法として有用な反応であると考えています。
J. Org. Chem. 77(11) 4907-4916. (2012)

Concise synthesis and anti-HIV activity of pyrimido[1,2-c][1,3]benzothiazin-6-imines and related tricyclic heterocycles.


ピリミドベンゾチアジン誘導体は、HIVやHCVに対して抗ウイルス作用を示すことが知られています。今回我々は、以前開発し本化合物の分岐的合成法を用いて、チアジンイミン骨格、ベンゼン環、アミジン環に様々な官能基を導入した誘導体を合成し、抗HIV活性を評価しました。その結果、チアジンイミン骨格のヘテロ原子の配列と、縮環構造が抗HIV活性の発現に重要であることがわかりました。また、ベンゼン環やアミジン環に疎水性の官能基を導入した場合に、活性の向上が見られ、最終的に2倍の抗HIV活性を有する誘導体を取得しました。続いて、本化合物の抗HIV活性を詳細に検討したところ、この化合物がウイルスの感染初期に効果を示すこと、および、HIV-2に対しても高い感染阻害活性を示すことがわかりました。
Org. Biomol. Chem. 10(33) 6792-6802. (2012)

Design and synthesis of novel class of CK2 inhibitors: application of copper- and gold-catalysed cascade reactions for fused nitrogen heterocycles.

プロテインキナーゼCK2は各種の癌や腎炎において過剰発現していることが知られており、CK2阻害剤はこれらの疾患の新規治療標的として期待されています。我々はこれまでの研究から得られたCK2の結晶構造、並びにCK2阻害剤の構造活性相関情報に基づき、新規骨格を有するCK2阻害剤を設計しました。当研究室で開発した縮環型複素環構築反応を利用して合成した誘導体のうち、ベンゾインダゾール誘導体が高いCK2阻害活性を示すことを見出しました。
Org. Biomol. Chem. 10(25) 4907-4915. (2012)

Paradoxical downregulation of CXC chemokine receptor 4 induced by polyphemusin II-derived antagonists.

ケモカイン受容体CXCR4は、腫瘍の転移やHIV感染に関与する受容体です。CXCR4アンタゴニストはこれらの疾患の治療薬として有効であることが知られていますが、その薬理活性を発現するためのメカニズムは詳しく明らかにされていません。我々は、カブトガニの生体防御ペプチド・ポリフェムシンII由来のCXCR4アンタゴニスト T140について、細胞膜上のCXCR4を特異的に蛍光標識する手法を利用して、T140作用後の受容体の動態を観察しました。その結果、T140の作用によってCXCR4-リガンド複合体が細胞内へ内在化している様子が観察されました。すなわち、CXCR4アンタゴニストの薬理活性の発現には、CXCR4の内在化が寄与している可能性が示唆されました。
Bioconjug. Chem. in press.

Structure-based design of novel potent protein kinase CK2 (CK2) inhibitors with phenyl-azole scaffolds.

CK2は、細胞増殖の促進とアポトーシスの抑制を含む複数の機能により腫瘍増殖に関与するプロテインキナーゼです。我々はCK2を標的とする癌治療薬の創製を目的として、新規CK2阻害剤の探索を行いました。バーチャルスクリーニングにより、約300万化合物のデータベースから中程度のCK2阻害活性を有するヒット化合物1を見出しました。続いて、X線結晶構造解析及び計算化学的アプローチを利用した分子設計と構造活性相関研究を行うことにより、強力なCK2阻害活性を示すフェニルチアゾール誘導体2を同定しました。
J. Med. Chem.55(6) 2899-2903. (2012)

Structure-activity relationship study of a CXC chemokine receptor type 4 (CXCR4) antagonist FC131 using a series of alkene dipeptide isosteres.

我々は、強力な抗HIV活性を示す環状ペンタペプチドFC131を見出しています。本研究では、FC131の生物活性に寄与する部分構造に4種類の特徴的なペプチド結合等価体を導入した誘導体を合成し構造活性相関研究を行いました。各誘導体の生物活性評価と構造解析を通して構造活性相関を合理的に説明可能な受容体との結合様式を明らかにするとともに、環状ペプチド構造を持つCXCR4拮抗剤の中で最も高い活性を示すFC122が、FC131とは異なる結合様式で受容体と結合することを明らかにしました。
J. Med. Chem.55(6) 2746-2757. (2012)

Development and application of fluorescent SDF-1 derivatives.

ケモカイン受容体CXCR4は、HIVの感染や悪性腫瘍の転移に関与する受容体の1つです。本研究では、CXCR4の細胞内局在等の検出に利用可能な内因性アゴニストSDF-1の蛍光標識プローブの創製に取り組みました。まず、SDF-1のペプチド鎖の構築を固相合成法により行った後、click chemistryにより残基特異的に蛍光標識を行うことで、各種誘導体を調製しました。得られた蛍光標識SDF-1の生物活性を評価したところ、非標識SDF-1と同程度の受容体結合活性、アゴニスト活性、および、受容体内在化活性を示し、CXCR4受容体プローブとして利用可能であることを明らかにしました。
Future Med. Chem. 4(7) 837-844. (2012)

Synthesis and application of an Nδ-acetyl-Nδ-hydroxyornithine analog: identification of novel metal complexes of deferriferrichrysin.

デフェリフェリクリシンは麹菌から産生される鉄キレート性環状ヘキサペプチドであり、3つの連続するアミノ酸側鎖に特徴的なヒドロキサム酸構造を有しています。今回我々は、Fmoc固相合成法に応用可能な保護アミノ酸の合成法を確立し、このアミノ酸誘導体を用いることでデフェリフェリクリシン及びその誘導体を合成しました。さらに、化学合成したデフェリフェリクリシンを利用してキレート錯体の探索を行ったところ、ジルコニウム及びチタンと配位した2種類の新規金属キレート錯体を同定しました。
Bioorg. Med. Chem. 20(8) 2651-2655. (2012)

Gold-catalyzed three-component annulation: efficient synthesis of highly Functionalized dihydropyrazoles from alkynes, hydrazines, and aldehydes or ketones.

3分子以上の化合物が一挙に結合する多成分反応は、多様な生成物を容易に得ることができるため、生物活性化合物の探索や構造最適化研究において有用性の高い反応です。我々は多成分反応を用いて、数多くの医薬品や生物活性化合物に含まれるピラゾール骨格を効率的に構築することに成功しました。末端アルキン、アルデヒドまたはケトン、及びヒドラジン誘導体に対して金触媒を作用させることにより、三成分環形成反応が進行することを見出しました。本反応により、これまで効率的な合成法が少なかった多置換ジヒドロピラゾール誘導体を容易に合成することが可能です。また、本反応のアルキン成分として1,2-ジエチニルベンゼン誘導体を用いることにより、連続環化反応が進行し縮環型ジヒドロインダゾール骨格を一挙に構築することにも成功しました。
Org. Lett. 14(1) 326-329. (2012)