Research

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2011

Pachastrissamine (jaspine B) and its stereoisomers inhibit sphingosine kinases and atypical protein kinase C.

Pachastrissamineは、2002年に海洋生物pachastrissa sp. から単離された天然物であり、様々な腫瘍細胞株に対して細胞毒性を示すことが知られています。しかしながら、pachastrissamineの生物活性に寄与する標的分子に関する報告 例は数少なく、その効率的合成法の開発、構造活性相関研究や標的分子探索が精力的に行われています。我々は、これまでに確立した分岐的合成法により得られた pachastrissamineの全立体異性体について、スフィンゴシンキナーゼ(SphK)およびプロテインキナーゼC(PKC)に対する阻害活性の評価を行い、全ての立体異性体がSphKおよびatypical PKC阻害活性を示すことを明らかにしました。
Bioorg. Med. Chem. 19(18) 5402-5408. (2011)

Structure-activity relationships of carboline and carbazole derivatives as a novel class of ATP-competitive kinesin spindle protein inhibitors.

キネシンモータータンパク質ファミリーの1つであるKSPは、中心体の分離・移動や紡錘体の形成など細胞分裂において重要な役割を果たしています。KSPを阻害することにより、細胞周期はM期で停止して、アポトーシスが誘導されること から、KSPは新たな抗癌剤の分子標的として注目を集めています。今回我々は、ビフェニル型構造を有するKSP阻害剤の自由回転可能な結合軸を環構造導入により固定化した各種誘導体をデザインし、構造活性相関研究を展開しました。その結果、β-カルボリン誘導体1およびラクタム環のアミド基を2位に有するカルバゾール誘導体2が極めて強力なKSP阻害活性を示すことを見出しました。さらに、阻害機構の検討を行い、これらがATP競合的に作用するKSP阻害剤であることを明らかにしました。
J. Med. Chem. 54(13) 4839-4846. (2011)

Formal total synthesis of (+)-Lysergic acid via zinc(II)-mediated regioselective ring-opening reduction of 2-alkynyl-3-indolyloxirane.

Ergot alkaloid類はカビの菌核より抽出されたインドールアルカロイドであり、リゼルグ酸をはじめとして数多くの天然物が報告されています。今回我々は、鍵反応であるルイス酸によるエポキシドの位置選択的開環反応を鍵反応とし たリゼルグ酸の効率的な合成経路の確立を計画しました。収束的な経路により合成可能なアルキニルエポキシド1を用いて、種々の還元剤とルイス酸を検討した結果、亜鉛トリフレートとNaBH3CNを組み合わせた際に、目的のプ ロパルギルアルコール2が選択的に得られることを見出しました。本反応においては、エポキシドへのルイス酸の配位と電子供与性のインドール環が協調的に作用して、位置選択的に3位が還元されたものと考えられます。続いて、当研 究室が開発したパラジウム触媒を用いたブロモアレンへの連続環化反応により、ergot alkaloid共通の四環性インドール骨格を有する3を得ました。得られた3はergot alkaloid共通の合成中間体であり、リゼルグ酸へは6工程で変換 可能です。このように我々は、ergot alkaloid類の新規合成経路の開発に成功しました。
J. Org. Chem. 76(13) 5506-5512. (2011)

Direct synthesis of highly fused perimidines by copper(I)-catalyzed hydroamination of 2-ethynylbenzaldehydes.

高度に縮環した多環式化合物はその高い電荷移動度から、色素レーザーや電界発光の材料等に用いられ、近年注目を集めています。我々は、以前報告した四成分カップリング反応によ る縮環型イソキノリン合成法を応用し、高度縮環型ペリミジン誘導体の新規合成法の開発を計画しました。検討の結果、銅触媒存在下、2-ethynylbenzaldehydeと1,8-diaminonaphthaleneの環 化付加反応を行った後、パラジウム触媒によるC-Hアリール化反応を行うと、高度に縮環したペリミジン誘導体が容易に得られることを見出しました。
Tetrahedron 67(29) 5168-5175. (2011)

Potent CXCR4 antagonists containing amidine-type peptide bond isosteres.

ケモカイン受容体CXCR4は、HIV-1感染や腫瘍の転移などに関係しているGタンパク質共役型受容体です。今回我々は、これまでに報告されたCXCR4拮抗剤が複数の塩基性官能基を多く含むという 知見に着目し、CXCR4拮抗剤FC131 にアミジン型ペプチド結合等価体を導入した類縁体をデザインしました。このうちのほとんどの誘導体がFC131よりも強力なCXCR4結合阻害活性を示し、特に ナフチルアラニンとグリシン間のペプチド結合を置換した誘導体が最も強力な拮抗活性を示すことを見出しました。
ACS Med. Chem. Lett. 2(6) 477-480. (2011)

Design and synthesis of amidine-type peptide bond isostere: Application of nitrile oxide derivatives as active ester equivalents to peptide and peptidomimetics synthesis.

アミジン型ペプチド結合等価体はペプチド結合のカルボニル基をイミノ基で置換した構造的相同性の高いイソスターです。今回我々は、固相上で合成したペプチドアルドキシム1より系中 生成可能なニトリルオキシド2を利用し、ペプチドのアミノ基との反応によって得られたアミドキシム3を鍵中間体として、目的とするアミジン型イソスター4を簡便に合成できることを見出しました。 本合成法を用いて、強力なインテグリンアンタゴニストとして知られる環状RGDペプチドのアミジン含有誘導体6を合成しました。さらに、鍵中間体であるアミドキシムを加水分解し、RGDペプチド7を得ることにも成功しました。
Org. Biomol. Chem. 9(9) 3421-3427. (2011)

Enantioselective total synthesis of (+)-Lysergic acid, (+)-Lysergol, and (+)-Isolysergol by palladium-catalyzed domino cyclization of allenes bearing amino and bromoindolyl groups.

Ergot alkaloid類はカビの菌核より抽出されたインドールアルカロイドであり、リゼルグ酸をはじめとして数多くの天然物が報告されています。今回我々は、パラジウム触媒によるアレンの連 続環化反応を鍵反応としたergot alkaloid類の不斉全合成を計画しました。パラジウム触媒を用いたEthynylaziridine 1とホルムアルデヒドとの還元的カップリング反応により1,3-アミノアルコー ル2を合成しました。2をヨード体3へと変換後、NHK反応を用いてアルデヒド4とのカップリング反応を行いました。得られたプロパルギルアルコール5をアレン6へと誘導し、パラジウム触媒による 連続環化反応によりergot alkaloid骨格を構築しました。さらに官能基変換により、(+)-lysergic acid, (+)-lysergol, (+)-isolysergolの不斉全合成を達成しました。
J. Org. Chem. 76(7) 2072-2083. (2011)

Activation of neuropeptide FF receptors by kisspeptin receptor ligands.

Kisspeptinは、視床下部-下垂体系において性ホルモンの分泌調節に関与するペプチドホルモンです。Kisspeptinの受容体はGPCRの一種であるGPR54であると報告され ており、前立腺癌等の治療薬としてGPR54リガンドの創製研究が広く行われています。我々は、鎖長の異なるkisspeptin類について各種神経ペプチド受容体への生物活性を評価し、kisspeptin-10が neuropeptide FF受容体(NPFFR1・NPFFR2)に対しアゴニスト活性を示すことを見出しました。
ACS Med. Chem. Lett.2(1) 53-57. (2011)