山岡清・由美子 若手研究者奨学金 報告書
生体分子計測学分野 博士後期課程2年
前田 朝登
活動内容
私は2026 年3月1日から2026年4月28日まで、EMBL Heidelberg (欧州分子生物学研究所ハイデルベルク拠点) で短期留学を行った。EMBL Heidelbergに所属するタンパク質安定性の網羅解析 (安定性プロテオミクス) の先駆者であるMichail Savitski博士らの研究室を訪問し、チロシンリン酸化修飾がタンパク質安定性に及ぼす影響を体系的に解明する共同研究を開始した。この訪問では、安定性プロテオミクスの最先端のバイオインフォマティクス解析を推進することを目的とした。
EMBL Heidelbergはドイツ・ハイデルベルク市郊外の森林に囲まれた山間部に位置し、ハイデルベルクの春の訪れを感じさせる新緑の芽吹きとともに、本活動を開始した (写真1) 。まず、チロシンリン酸化タンパク質の融解挙動データセットを用いて、リン酸化修飾体と非修飾体の融解挙動を比較解析する方法を学んだ。研究室のミーティングや現地研究員との議論に参加することで、解析方針やデータセットの正規化方法等について、高い専門性に基づく適切な助言を受けながら、円滑に解析を進めることができた。結果、融解挙動を変化させるリン酸化修飾部位を多数同定することに成功した。また、訪問開始から1か月が経過した時期には、定期ミーティングで自身の研究進捗を1時間発表する機会をいただいた (写真2)。自身の研究分野への高度な専門知識を有する博士研究員8名の前で、英語を用いて対面で発表・議論する経験は、自身の研究発表能力を向上させる上で大変有意義な機会となった。残りの滞在期間中は、融解挙動を変化させるリン酸化部位の機能的特徴の解析に注力し、リン酸化部位が位置するタンパク質構造や機能的ドメインの特徴を抽出することに成功した。
滞在中、EMBLの組織構造について学び、また研究員と公私にわたって交流することができた。EMBLは特定の国に属さず、研究所内での食事や試薬購入には税金が発生しないなど、欧州各国による多大な支援を受けながら運営されている。この潤沢な研究環境が世界中から優れた研究者を惹きつけ、集まった人材と充実した研究機器が分子生物学の発展を支え、ひいては欧州各国からの継続的な支援の基盤を形成していると認識した。また、週末に研究員と一緒にランニングやボルダリングを楽しみ、自分の誕生日にケーキを振る舞うというドイツ文化を経験することができた。交流の過程で、当初は抵抗のあった英語でのコミュニケーションにも徐々に慣れ、研究室内で議論する際の心理的なハードルを下げることができた。
この短期留学により、自身の新たな研究プロジェクトを推進できたのみならず、国際的な環境で研究・議論・生活を行う貴重な経験を得ることができた。これらの経験を今後の研究活動やキャリア形成に活用していきたい。最後に、本活動を支援いただいたEMBO Scientific Exchange Grantおよび山岡清・由美子 若手研究者育成奨学金に深く感謝申し上げます。
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