薬学研究科長・薬学部長 山下 富義
医薬品は、病気の治療や予防、症状の軽減を通して、人々の健康と生活の質を支える重要な存在です。薬学の分野では、新しい有効成分を見いだし、その安全性や有効性を科学的に評価して医薬品として社会に届ける「医薬品の創製」と、患者一人ひとりの状態に応じて薬を安全かつ効果的に用いる「医薬品の適正使用」の双方が重要な柱となっています。近年は、人工知能(AI)を活用した創薬や、mRNAやsiRNAなどの新しいタイプの医薬品の開発が進むなど、医薬品研究は大きく発展しています。このような時代において、革新的な医薬品を生み出す研究力と、それらを適切に医療現場で活かす専門的知識の両方を備えた人材の育成が、薬学の重要な使命となっています。
京都大学薬学部は、1939年に設置された医学部薬学科を前身として、1960年に独立した学部として開設されました。以来、本学は基礎薬学、創薬科学、医療薬学の各分野において優れた人材を育成し、大学や研究機関で最先端の生命科学・創薬研究を推進する研究者をはじめ、製薬企業や化学、食品などの幅広い産業分野で研究開発を担う研究者・技術者、医療現場で患者の治療を支える薬剤師など、多くの卒業生が国内外のさまざまな分野で活躍しています。本学の教育と研究の成果は、医薬品科学を中心に生命科学や化学関連分野の発展を通して、人々の健康と社会の発展に広く貢献しています。
現在、薬学部には、創薬科学を志向する人材を育成する4年制の薬科学科と、高度医療を支える薬剤師を養成する6年制の薬学科が設置されています。大学院薬学研究科は、先端的な薬科学分野における教育・研究を担う薬科学専攻(修士課程・博士後期課程)および創発医薬科学専攻(5年一貫制博士課程)と、医療薬学分野における高度な研究を推進する薬学専攻(4年制博士課程)の3つの専攻から構成され、基礎研究から創薬、医療応用に至るまで一貫した教育・研究体制を整えています。
京都大学薬学部・薬学研究科は、研究大学としての使命のもと、生命科学と医薬品科学の発展を切り拓く独創的な研究者および高度な専門性を備えた人材の育成を目指しています。基礎科学に立脚した深い学識と確かな研究力を基盤に、創薬科学から医療応用に至るまでを俯瞰的に理解し、新しい学問領域や医療の可能性を切り拓くことのできる人材を育てます。また、自ら課題を見いだし挑戦する主体性と国際的視野を備え、医薬品科学を通して人々の健康と社会の発展に貢献できる人材の育成に取り組んでいます。