2025 年10 月1 日にオルガネラ情報学分野の教授に着任しました関根史織(せきねしおり)と申します。私は、2006年に東京大学薬学部を卒業後、東京大学大学院薬学系研究科にて修士号と博士号を取得しました。その後、同研究科で約 5 年ほど助教等の職位で研究を続け、2016 年に米国国立衛生研究所(NIH)へポスドクとして留学しました。2019 年からは、米国の Aging Institute, University of Pittsburgh にて独立研究室を主宰しています。今後半年間は京都大学薬学系研究科とのクロスアポイントメントを行い、来年の 2026 年 4 月からはフルアポイントメントで、同研究科に新たな研究室を開設する予定です。
私の研究対象であるミトコンドリアは、細胞内最大のエネルギー産生工場であると同時に、鉄コファクター合成や体熱産生、さらには細胞死や免疫応答に至るまで、我々の生命活動のあらゆる側面を支える重要なオルガネラです。近年の研究により、ミトコンドリアは、自身内外の環境変化やストレスを感知し、適切な細胞応答を活性化することで、自身の多機能性、ひいては細胞や個体全体の恒常性を維持する巧妙な仕組みを備えていることが明らかとなってきました。様々な細胞応答の一つとして、ミトコンドリアと他のオルガネラとの間で密接なコミュニケーションが行われていることも明らかとなってきています。私は、この「ミトコンドリアがどのように環境変化を感知し、細胞内シグナル伝達へと変換するのか」という根本的な問いに挑み、その分子機構を解明することで、ミトコンドリア機能不全に起因する多様な疾患の理解と、新しい創薬・治療戦略の開発につなげることを目指しています。
博士課程の時に取り組んだミトコンドリア局在タンパク質の研究をきっかけに、ミトコンドリアに備わった驚くべき精巧な仕組みに魅せられ、以来 15 年以上研究を続けてきました。細胞の中で起きている小さな(しかし本質的に大きな)出来事への純粋な好奇心が、多くの出会いを導き、米国への留学やさらには同国での独立研究室運営につながり、自分でも予期していなかった道が開けました。京都大学への着任を機に、薬学研究科や他部局の先生方、企業の研究者の方々など、多様な専門知を持つ方々と交流を深め、新たな研究領域にも積極的に挑戦していきたいと考えています。また、これまでの経験を学生の皆さんに伝え、皆さんが世界に羽ばたくきっかけを一つでも多く作ることができればとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。