薬学国際研究交流 part8

Engineering hemolytic peptides for intracellular delivery of biomacoromolecules

薬学研究科 生体機能設計化学研究領域

修士課程 1年 秋柴 美沙穂

 

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ポスター会場にて

京都大学薬学研究科国際研究交流大学院生支援事業の支援を受け、シンガポール国立大学で開催された3rd Asian Chemical Biology Conference(2014年12月15日〜17日)に参加し、シンガポール国立大学化学部Young-Tae Chang教授の2つの研究室を訪問して参りました。

学会の参加者は約100名。内学生は約2割と比較的少なく、日本・韓国・シンガポール・中国・台湾のケミカルバイオロジー分野を牽引する先生方が一同に会していました。

講演は、分子プロ-ブの創製や生体物質の合成に関するものが数を占めていました。しかし、標的・目的物質が多岐に渡るため、広い分野の知識が必要となり理解が難しいことが多くありました。ただその分触れたことがない分野の話を聞くことができ、非常に好奇心をくすぐられました。私自身は、2日目に行われたポスターセッションで、膜傷害性ペプチドを用いた細胞内に抗体を導入するツールの開発についての研究成果を発表しました。1時間のセッションの間に5組の方が聞きに来て下さり、ほとんど暇な時間はありませんでした。今回は私にとっての初めてのポスタープレゼンテーションであり、何をどれだけ説明すべきかの取捨選択に迷いたどたどしい説明になるなど、今後の課題を認識することができました。

会議翌日には、シンガポール国立大学化学部Young-Tae Chang教授の研究室を訪問しました。同研究室では細胞内タンパク質の蛍光可視化技術の開発をおこなっています。研究室は2ヶ所にあり、シンガポール国立大学化学部でプローブの合成を行い、シンガポールにおけるバイオ分野の研究開発拠点である「バイオポリス」でバイオアッセイをするシステムになっています。ポスドクの方が1日中ついて下さり、研究室だけでなく、大学・バイオポリス全体まで広く案内していただき、研究内容や研究戦略に関して意見交換を行いました。

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Chang教授の研究室の前にて。案内していただいたポスドクの方・シンガポール国立大学学生と。

バイオポリスは、バイオサイエンス・バイオメディカルサイエンスの国際的なハブとなることを目指すシンガポールにおいて、経済開発庁が2006年に建設した研究開発拠点です。7つの研究棟は地下でつながっており、試薬や培地等の研究物資は地下の一角で一元的に管理され、壁一面のキャビネットに試薬が整然と並んでいる様は圧巻でした。案内していただいたLee博士が、バイオポリスはバイオ関連の研究室・企業の集積地であるため、共同研究や研究成果を製品化するにはベストな環境だと語っておられたのが印象的でした。Young-Tae Changの研究室では、様々な種類の幹細胞に用いる蛍光プローブの研究開発を進めており、そのスクリーニングの様子を見学しました。隣の研究室との境がなく、壁があまりないため、開放感がありました。

次に訪れたシンガポール国立大学は商業施設・寮・レストランなどが充実し、大学全体がひとつの街として成立しています。非常に国際色豊かで、シンガポールの大学生はほとんどが留学生です。博士号を取得したあとの進路も様々で、母国で企業に就職したり、ポスドクとして欧米に行くのが多いということでした。学生の方々は忙しい中、彼らの研究生活・進路等に関する私の質問に答えてくださいました。日本とシンガポールの環境の違いを強く感じた経験でした。

英語でのコミュニケーションや世界に視野が広がっている研究・学生との出会いは刺激的で、今後の研究活動のみならず将来を考える上でも非常に参考になりました。最後になりましたが、得られた貴重な経験を今後の研究生活に活かせるよう努めるとともに、国際交流の機会を与えていただいたことに深く感謝申し上げます。