第19回国際薬物動態学科(ISSX)北米年会/第29回日本薬物動態学会(JSSX)合同年会ポスター発表及び米国における臨床薬学に関する視察
薬学研究科 臨床薬学教育分野
博士課程 2回生 吉村 和晃
この度私は、京都大学薬学研究科の国際研究交流大学院生支援事業の援助により、第19回国際薬物動態学会(ISSX)北米年会/第29回日本薬物動態学会(JSSX)合同年会に参加・発表すると共に、University of California, San Francisco(UCSF)を訪問し、Donald T. Kishi教授及びSteven Kayser教授と、UCSFにおける薬学教育と今後の臨床薬学教育に関する展望について意見交換を行いました。
現在私は免疫抑制薬であるミコフェノール酸の薬物動態及び薬効(PK-PD)解析について研究を行っており、「Effect of protein binding on pharmacokinetics and pharmacodynamics of mycophenolic acid using a population-modeling approach」というタイトルで本合同年会においてポスター発表しました。ポスター発表時や自ら質問を行う際に、英語で内容を相手に伝えることに対して四苦八苦し、コミュニケーションを行う上でより高度な語学力の重要性と、日頃から英語に触れて学ぶ必要性を痛感しました。またレセプションに参加し、多くの研究者と交流する中で、研究に対する熱意を感じとることができ、自身の研究に対する意欲を高めることが出来ました。
現在所属している臨床薬学教育分野では薬学生に対する実務実習教育や医療薬学教育研究を担っています。今回訪問したKishi, Kayser両教授はUCSFにおけるPharm.D.教育に古くから携わっている先生方であり、日米における薬剤師のシステムの違いやUCSFの薬学教育について学ぶため、意見交換の場を設けて頂きました。今回面談を通じて驚いたことはアメリカにおける調剤システムとUCSFで行われている取り組みです。UCSFの病院では、患者の安全性の向上と病院内業務の効率化を目的に、内服薬の計数及び注射調剤を行うロボットを最近導入したそうです。アメリカの薬局や病院では、一般的にテクニシャンが調剤業務を行います。そのため薬剤師の主な業務は、調剤ではなく、処方解析や処方提案となっています。またUCSF内には大学が経営する薬局(Wallgreens)が併設されており、病院と連携して患者情報を相互に共有し、患者サービスに生かすと共に、病院への受診を減らすことで全体の医療費を減少させるための取り組みを開始していました。さらに、UCSFの入学試験に用いられているMultiple mini interviewやOSCEで用いる施設も案内して頂きました。この施設では、学生の模擬患者に対する対応を、教員が別室のモニターでチェックすることが出来ます。模擬患者にも多種多様な設定があり、中にはホームレスに対する対応もあると聞いたときには大変驚かされました。
一週間という短い滞在期間でしたが、海外での学会参加や様々な立場の方との意見交換の中で多くのことを吸収することが出来ました。今回の経験を今後の研究生活に活かせるよう努力したいと思います。最後になりましたが、国際交流の機会を与えて頂いたことに深く感謝申し上げます。誠にありがとうございました。