2025年度より組織形成動力学分野・准教授に着任しました上地浩之です。私は、2015年に東京大学大学院薬学系研究科・村田茂穂教授の研究室で、細胞内タンパク質分解経路の一つであるユビキチン・プロテアソームの研究で学位を取得しました。次に理化学研究所・多細胞システム形成研究センターと東北大学大学院生命科学研究科で上皮組織の形態形成を研究した後、マックス・プランク研究所 (ドレスデン、ドイツ) で、細胞内相分離 (タンパク質などの生体高分子が自身や周りの熱力学的性質に応じて動的に区画化し機能する現象) の研究に従事しました。2023年4月から東北大学学際科学フロンティア研究所、本年度より本学の所属となりました。
日本帰国後はそれまでの経験を組み合わせて、細胞内相分離現象を、組織形態形成と恒常性維持の2つの文脈で研究しています。組織の発生は構成する集団細胞の協調的なダイナミクスで生成され、その集団細胞運動も細胞接着分子や機械的力生成分子などタンパク質の組織だった動態と機能で制御されます。また、加齢や神経変性疾患などでは組織内に特定のタンパク質の異常凝集体が形成され、これが細胞毒性の原因とされています。私は、これらタンパク質が分子集合として呈する動態の発現や調節機構を、細胞内相分離という熱力学的視点から追究することで、生体分子が生理的ダイナミクスと組織発生・維持機能を生み出すしくみを明らかにしたいと思っています。
本研究は個々の分子実体から分子の集合としての動態、集団細胞動態、組織形態形成と、分子から組織までマルチスケールに着目しており、薬科学研究に重要な視点の一つであると考えています。本研究を通じた研究・教育活動により、サイエンスの楽しさや重要性を薬学部・薬学研究科から発信・共有していけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。