- 教授 緒方 博之
- 助教 遠藤 寿
- 助教 岡﨑 友輔
- 助教 疋田 弘之
研究概要
私たちの分野では微生物生態進化学を行なっています。最新技術により大規模ゲノムデータを産出し、分子から地球環境までの視点で、生命の多様性、機能発現、進化機構を解明するためのフィールド調査、バイオインフォマティクス解析、実験研究を行っています。具体的には、①巨大ウイルスの生態と進化、②微生物生態系の機能と環境との相互作用、③ゲノムデータ資源の有効活用のための基盤情報技術の開発を中心に研究を進めています。
緒方研究室のモットーは「ドライTO(と)ウェット」です。理論的研究から仮説を導き、実験やフィールド調査で仮説を検証する。同時に、フィールド調査・分析・データ解析という一連の工程を完全に掌握しながらドライ研究を進める。バイオインフォマティクス(ドライ)を主要な武器として検証までを視野に入れ研究を進めています。
巨大ウイルス
様々な病気の病原体として知られるウイルスは、ゲノムも小さく、最適な自己増殖のために、極めて単純化された寄生体とみなされる傾向があります。しかし、ヘルペスウイルスや天然痘ウイルスなど比較的大きなウイルスは、おおよそ200 個の遺伝子を保持します。さらに近年、その大きさで細胞性微生物に匹敵し、遺伝子を数百〜2,500 個以上も保持する巨大なウイルスが発見されています。こうした大型なものも含め、ウイルスの世界は極めて多様で、また、様々な感染戦略により宿主の防御システムを逃れ、宿主細胞をウイルス粒子の生産に向けてリプログラミングします。当研究室では、こうした多様なウイルスの遺伝子機能、感染戦略を明らかにし、ウイルスの生態系での役割・進化の理解を深めるための研究を進めています。
微生物生態系
腸内をはじめ生体内、そして、様々な自然環境で細菌や真核微生物が重要な役割を果たしています。当研究室では、腸内細菌や海洋プランクトン(真核微生物、細菌、ウイルス等)がいかなるコミュニティーを形成し、その機能を発現しているかを探っています。種の多様性と遺伝子の多様性を特徴づけ、種間相互作用(寄生、共生、競合、捕食・被捕食関係)を理解し、微生物集団の機能、動態、そして進化が、周囲の環境といかに関連しているのかを解明することを目的としています。同時に、環境ゲノムデータをもとに、新規酵素や薬理活性を示す新規天然物を発見するための基礎研究を行っています。
基盤情報技術
基礎生命科学と創薬・医療・環境保全への応用を推進するためのウェブリソースであるゲノムネット(http://www.genome.jp/)を開発し世界に配信しています。ゲノムネットからは、京都大学で開発されているシステム生物学データベースKEGG をはじめ、世界中の主要なデータベースにある遺伝子・タンパク質・酵素反応・代謝化合物・医薬品・天然物・疾患・副作用など、様々なコンテンツが収録され、最新のバイオインフォマティクス技術による統合的な検索が可能です。現在は、ウイルスゲノムデータの整備、全地球規模の海洋探査によって得られた大規模な海洋微生物データの統合を進めています。こうした生命知識リソースを基礎研究・応用研究に有効利用するためのバイオインフォマティクス研究も進めています。
主要論文
- Meng L., Endo H., Blanc-Mathieu R., Hernández-Velázquez R., Kaneko H., Ogata H. Quantitative assessment of NCLDV–host interactions predicted by co-occurrence analyses. mSphere, 6, e01298-20 (2021).
- Aramaki T., Blanc-Mathieu R., Endo H., Ohkubo K., Kanehisa M., Goto S., Ogata H. KofamKOALA: KEGG ortholog assignment based on profile HMM and adaptive score threshold. Bioinformatics, 36, 2251-2252 (2020).
- Mihara, T., Koyano, H., Hingamp, P., Grimsley, N., Goto, S., Ogata H. Taxon richness of “Megaviridae” exceeds those of Bacteria and Archaea in the ocean. Microbes Environ., 33, 162-171 (2018).